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分散学習とは?生成AI時代の必須技術を基礎から解説|データ並列とモデル並列の違い【トゥモロー・ネット テックブログ】

生成AI、特に大規模言語モデル(LLM)の爆発的な普及に伴い、単一のGPUでは収まりきらない膨大な計算をいかに効率よく処理するかが、AI開発の成否を分ける鍵となっています。

その解決策として不可欠なのが「分散学習」です。分散学習には、データを分割して複数のGPUで処理する「データ並列*1」や、モデルそのものを分割する「モデル並列*2」といった手法があり、これらを組み合わせることで学習時間を劇的に短縮できます。

しかし、理論上はGPUを増やせば増やすほど速度が上がるはずですが、実際にはインフラ設計の不備により、計算リソースを十分に活かしきれないケースが少なくありません。

本記事では、分散学習の基礎から、パフォーマンスを阻害する物理的な要因、そしてそれらを解決するための最適なインフラ設計について解説します。

*1データ並列:データを複数のGPUメモリに分割し、同時に学習させる技術です。
*2モデル並列:AIモデルを分割して複数のGPUメモリに配置し、学習を行う技術です。

なぜ分散学習で期待通りのスループットが出ないのか?

ここでは、GPUの増設が必ずしも線形的な性能向上に繋がらない理論的背景や、通信処理が演算リソースに与える影響について解説します。

計算リソースの増大と「アムダールの法則」の壁

単にGPUの数を増やすだけでは、並列化できない処理や同期処理のオーバーヘッドにより、線形的な性能向上は得られません。理論値と実測値の乖離を生む要因を理解することが、効率的なインフラ設計の第一歩となります。

分散学習において、どれほど多くの計算機を並べたとしても、システム全体のスループットは「並列化できない逐次処理部分」の速度に制限されます。これがアムダールの法則です。

学習プロセスにおけるデータのシャッフルやチェックポイントの保存といった逐次的な処理が残る限り、GPUの増設による恩恵は頭打ちになります。したがって、計算リソースの単純な積み上げではなく、非効率なプロセスを極限まで排除する設計思想が求められます。

通信オーバーヘッドが招く計算リソースのアイドル状態

GPU間のデータ同期(All-Reduceなど)に時間を要すると、演算ユニットが通信待ち状態となり、投資対効果が低下します。分散学習において、ネットワーク帯域とレイテンシは計算能力と同等、あるいはそれ以上に重要な要素です。

複数のGPUが連携してパラメータを更新する際、各デバイス間でのデータのやり取りがボトルネックになると、GPUは次の計算を開始できずに待機してしまいます。

このアイドル状態は、クラスターの規模が大きくなるほど顕著になります。演算性能の増強に見合った広帯域の通信経路を確保し、同期にかかる時間を計算時間に隠蔽できるような高度な設計を行わない限り、高価なGPUリソースは宝の持ち腐れとなってしまうでしょう。

分散学習を阻害するインフラ側の技術的要因

ここでは、CPUの処理負荷やNUMA構成、さらにはPCIe帯域の競合といった、物理レイヤーで発生するボトルネックの正体について解説します。

CPUボトルネックとNUMA構成によるメモリレイテンシ

GPUへデータを供給する際のCPU負荷や、NUMAノードを跨ぐメモリアクセスは、データのロード時間を増大させる要因となります。ソケット間のデータ転送遅延を最小化するCPUアフィニティの設定と、I/Oバランスの最適化が不可欠です。

分散学習では、ストレージからデータを読み込み、前処理を行ってGPUへ送る役割をCPUが担います。この際、マルチCPU構成においてGPUが「物理的に離れた」CPUソケットに紐付くメモリへアクセスすると、大きな遅延が発生します。これを防ぐためには、BIOSレベルでのNUMA最適化や、プロセスを特定のCPUコアに固定するアフィニティ設定が必要です。物理的なデータパスを最短化するチューニングを施すことで、データの供給不足によるGPUの停滞を防ぐことが可能になります。

PCIe帯域の競合とトポロジー設計の不備

GPUがCPUと直結されていても、同一のルートコンプレックスにHBAやストレージが集中すると、内部バスやメモリ帯域での競合によりGPUへのデータ供給が滞るケースが多々あります。本来の性能を引き出すには、データフローが特定のパスに偏らないよう、物理層から接続トポロジーを設計し直す必要があります。

サーバー内部では、限られたPCIeレーンをGPU、NIC、ストレージなどが共有しています。特に分散学習用の高帯域NIC(InfiniBand等)とGPUが同じバスを奪い合うような不適切なトポロジーでは、通信と演算の並行処理が阻害されます。各デバイスが最大の帯域を確保できるよう、マザーボード上の物理的な配線まで考慮したコンポーネント配置を選択することが、真のパフォーマンスを引き出すために極めて重要です。

失敗しない分散学習基盤の選定・設計基準

ここでは、NVLinkやInfiniBandを組み合わせた階層的ネットワーク設計の重要性と、検証済み構成を採用するメリットについて解説します。

NVLinkとInfiniBandによる高速インターコネクトの統合

GPU間通信にNVLinkを、ノード間通信にRDMA対応のInfiniBandを採用するなど、階層化された高速インターコネクト設計が必須です。点でのスペック比較ではなく、システム全体のデータフローを俯瞰した帯域設計が求められます。

サーバー内部(ノード内)での超高速なデータ交換を担うNVLinkと、サーバー間(ノード間)を低レイテンシで繋ぐInfiniBandを最適に組み合わせることで、分散学習の通信ボトルネックは大幅に緩和されます。各コンポーネントの帯域幅が不整合であれば、どこかで必ず「渋滞」が発生します。データが流れる全ての経路において、ボトルネックを排除した一貫性のある帯域設計を行うことが、スケーラブルなAI基盤を構築する上での鍵となります。

InfiniBand(インフィニバンド)とは?Ethernet(イーサネット)との違いも解説

ハードウェア・ソフトウェアの両面からの最適化

最新のSupermicro製品をベースに、ライブラリ層(NCCLなど)とハードウェア特性を合致させるチューニングが重要です。自社でのコンポーネント調達による構成の不整合を招きやすいため、検証済みのリファレンスアーキテクチャの活用が推奨されます。

ハードウェアがどれほど高性能でも、それを制御するソフトウェア層の設定が適切でなければ、最大性能は発揮されません。例えば、NVIDIA Collective Communications Library (NCCL) がハードウェアトポロジーを正しく認識し、最適なパスを選択するように構成する必要があります。こうしたハードとソフトの緊密な連携を自社で一から検証するのは極めて困難であるため、あらかじめ最適化が証明されたリファレンス構成を軸に据えることが、安定稼働への最短ルートとなります。
Supermicro GPUサーバー製品

分散学習の真価を引き出すトゥモロー・ネットの解決策

ここでは、NVIDIA Elite Partnerとしての弊社の専門性と、インフラ全体を最適化するフルスタック支援の内容について解説します。

NVIDIA Elite Partnerとしての高度な技術支援

弊社はNPN Partner Award 2023 Rising Star Awardを受賞しており、NVIDIA製GPUのポテンシャルを最大化する設計ノウハウを保有しています。最新のB200/RTX PRO 6000等の調達力に加え、複雑なクラスター環境の構築を技術面から強力にバックアップします。

Elite Partnerとしての確かな立場を活かし、最新の製品情報はもちろん、NVIDIAが推奨する高度なネットワークトポロジー設計を提供します。特に分散学習においては、単純なハードウェアの選定ミスが致命的な性能劣化に繋がります。弊社は、最先端のGPUリソースを最大限に活かすための最適なクラスター構成を、お客様のワークロードに合わせてオーダーメイドで提案します。

ボトルネックを解消するワンストップ・フルスタック提供

サーバー単品の提供に留まらず、ストレージ、ネットワーク、そしてNUMA最適化やBIOSレベルの設定まで、インフラ全体を統合的に設計・運用します。お客様のAI開発を止めることなく、将来のスケールアウトまで見据えた最適なインフラ環境を実現します。

弊社の強みは、ハードウェアの組み立てからソフトウェアのチューニングまでをシステム全体のデータフローで支援できる点にあります。Supermicro製サーバーの特性を熟知したエンジニアが、OSのカーネルパラメータ調整から高速ネットワークの構築までワンストップで対応します。これにより、導入後のトラブルを最小限に抑え、AI開発者が計算環境の構築に煩わされることなく、モデル開発に専念できる環境を構築いたします。
【お役立資料】企業のAI戦略・活用を支える GPUインフラ設計

まとめ

分散学習の成功は、単にGPUを並べることではなく、アムダールの法則を打破し、通信やI/Oのボトルネックをいかに排除するかにかかっています。物理レイヤーからソフトウェア層まで、システム全体が一つの有機体として機能する設計こそが、次世代のAI開発に不可欠な基盤となります。

株式会社トゥモロー・ネットは、NVIDIA Elite Partnerとしての深い知見と、Supermicro正規一次代理店としての確かな実績を兼ね備えています。私たちは、AIインフラの設計・構築から運用までを一貫して提供し、NUMA最適化や高速インターコネクト設計といったフルスタックの支援を通じて、分散学習のパフォーマンスを最大化します。将来のスケールアウトも見据えた、強固で最適な計算基盤をトータルコーディネートいたします。「GPUを増設しても性能が伸びない」「分散学習環境の構成に不安がある」といった課題をお持ちの方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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この記事を書いた人

株式会社トゥモロー・ネット

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