クラウドコンピューティング技術がデータセンターに与える影響【トゥモロー・ネット テックブログ】
企業におけるクラウド利用が一般化した昨今ですが、クラウドコンピューティングの登場によりデータセンターにも変化が起きています。クラウドの一般化やAI・IoTによるデータ量の爆発的な増加、エネルギー問題など、データセンターを取り巻く環境も変わりつつあります。
この記事では、データセンターの現状を整理しつつ、クラウドをはじめとした最新技術によりデータセンターに求められる要素がどのように変化しているのか、詳しく解説します。
目次
クラウドとデータセンターの基礎知識
まず、クラウドとデータセンターの基礎知識を簡単にまとめます。
クラウドとは?
クラウドとはインターネット経由でサービスを利用できる仕組みの総称です。従来利用されてきたオンプレミス環境では、物理サーバーを購入してデータセンターやサーバールームなどに設置して利用していましたが、クラウドでは各クラウド事業者が大量にサーバーやストレージを保有しており、利用者はそれらを部分的に利用することができます。これにより、サーバーやストレージのリソースを柔軟かつ迅速に利用できるようになりました。
また、アプリケーションレベルまでクラウドとして提供されるSaaS(Software as a Service)や、仮想デスクトップをクラウド上で利用できるDaaS(Desktop as a Service)など、様々な形式で提供されているクラウドサービスが存在します。
データセンターとは?
データセンターは、サーバーやストレージ、またそれらを格納するラックなどを収容する施設です。データセンターにはサーバーなどを安全に設置し、継続的に安定して利用できるようにするための様々な設備が備わっています。たとえば停電時のための非常電源設備や、サーバーの性能を最大限に引き出すための冷却設備、生体認証や監視カメラなどによる強固なセキュリティなどが用意されています。
両者の整理
クラウドとデータセンターの関係性について端的に整理すると「データセンターはクラウドを実現するために必要となる設備の一つ」といえます。基本的にクラウドとして提供されているサービスも、データセンター上で動作しています。データセンター上に大量に設置されているサーバーを部分的に利用できるサービスがクラウドと捉えるとわかりやすいでしょう。
データセンターの現状
以下では、クラウドの登場や最新技術動向も踏まえ、データセンターの現状を整理します。
オンプレミスからクラウドへの移行
従来、企業はシステムを運用する場合、自社で購入したサーバーやストレージをデータセンターに設置して利用する「オンプレミス型」を採用していました。一方で、膨大なリソースの一部を利用できるクラウドの登場により、企業は個別にサーバーを購入するケースが減り、データセンターのユースケースも変化しています。
現在は、オンプレミスシステムの設置場所としてのデータセンターのニーズは低下傾向にあり、代わりにクラウドの基盤としてデータセンターを利用するニーズが拡大しています。
データ量の増加
AI技術、IoT技術の普及も背景に、コンピューター上で管理されるデータの量は爆発的に増えています。ある調査※では、2020年では64.2ゼタバイトであったデータの生成量が、2025年には181ゼタバイトまで増えるという推計もあります。これらのデータを管理し活用するためには、データセンターが必要です。データセンターの役割はより重要なものとなっているといえるでしょう。
※参考:Volume of data/information created, captured, copied, and consumed worldwide from 2010 to 2020, with forecasts from 2021 to 2025
エネルギー問題
増え続けるデータ量や半導体の性能向上などを背景に、データセンターにおける消費エネルギー量の増加が問題となっています。資源エネルギー庁では2022年からデータセンター業のベンチマーク制度を導入するなど、データセンターのエネルギー消費量削減は国家的な取り組みとして進んでいる状況です。データセンターにおける消費エネルギー量を減らすための手法にも注目が集まっています。
クラウドによるデータセンターの変化
このような現状を踏まえつつ、以下ではクラウド技術によりデータセンターがどのように変化しているかを紹介します。
AIデータセンター
クラウド上でAIモデルの構築や学習、推論を行いたいというニーズの増加を受け、AIに特化したデータセンターを構築する動きも進んでいます。たとえば、ソフトバンク・KDDI・シャープは、シャープ堺工場の土地と建物を利用して大規模なAIデータセンターを構築することを発表しています※。AIデータセンターではハイスペックなGPUを搭載したGPUサーバーが多数用意され、これらをクラウド経由で利用することができます。
高まるAI需要を受け、今後もニーズをカバーするためのデータセンター構築が進むと想定されます。
※参考:SHARPプレスリリース「シャープ堺工場を活用した大規模なAIデータセンターの構築について」
グリーンDC
データセンターにおける消費エネルギー量を抑えた「グリーンDC」がトレンドとなっています。効率的な空調システム、冷却システムを備え、消費電力量を抑えることができるデータセンターが登場しています。
また、近年では、施設内に太陽光パネルを設置したデータセンターが登場したり、データセンターの利用において電力会社から調達した再生可能エネルギーを選択できたりと、カーボンニュートラル実現に向けた取り組みも進んでいるところです。
エッジDC
大量のデータを生成場所の近くで処理する、いわゆるエッジコンピューティングを実現するために「エッジDC」という概念も登場しています。データ生成場所の近くにエッジDCとして小規模のデータセンターを構築することで、ネットワークの遅延を最小化し、レイテンシーを短縮することができます。エッジDCとクラウドを連携させ「近くて素早い処理を実現するエッジDC」と「大量のデータを保管し分析を行うためのクラウド」というアーキテクチャ設計を採用するケースも増えています。
オンプレミス回帰の流れも
クラウドへの移行が進みつつある一方で、一度クラウドへ移行したシステムをオンプレミスへ戻す「オンプレミス回帰」の動きも見られつつあります。クラウドへ移行したものの思ったよりもコストが削減できなかったり、障害発生時の対応が難しかったりといった理由で、オンプレミスへと再移行する企業も増えています。今後、データセンターにおけるホスティング、ハウジングの需要も一定程度残ることが想定されます。
当社ではデータセンターへ多数のサーバー、ストレージを納入している実績がございますが、近年ではデータセンターにSupermicro社のGPUサーバー、汎用サーバーを設置し利用されるお客さまも増えています。各システム個別のサーバーとして利用されるケースや、いわゆるプライベートクラウドとして仮想化環境を構築されるケースもあり、コストや用途に応じてパブリッククラウド以外にも様々な選択肢が考えられます。
まとめ
この記事では、クラウドコンピューティングなどの最新技術によりデータセンターにどのような影響があるか、そのトレンドについてご紹介しました。クラウドの普及やAI技術の進歩、DX推進、データ活用など様々な背景により、データセンターの需要は高まり続けています。クラウドの利用が進む一方で、オンプレミス回帰の動きも見られ、ニーズが多様化している状況にあるといえるでしょう。
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この記事の筆者
株式会社トゥモロー・ネット
クラウドソリューション本部
トゥモロー・ネットは「ITをもとに楽しい未来へつなごう」という経営理念のもと、感動や喜びのある、より良い社会へと導く企業を目指し、最先端のテクノロジーとサステナブルなインフラを提供しています。設立以来培ってきたハードウェア・ソフトウェア製造・販売、運用、保守などインフラに関わる豊富な実績と近年注力するAIサービスのコンサルティング、開発、運用、サポートにより、国内システムインテグレーション市場においてユニークなポジションを確立しています。
インフラからAIサービスまで包括的に提供することで、システム全体の柔軟性、ユーザビリティ、コストの最適化、パフォーマンス向上など、お客様の細かなニーズに沿った提案を行っています。
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