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Tensorコアとは?AI・ディープラーニングの計算を劇的に高速化するNVIDIA GPU【トゥモロー・ネット テックブログ】

近年、生成AI、大規模言語モデル(LLM)、高度な画像認識といったディープラーニング技術の発展により、演算量やデータ量が急激に拡大しています。

そんな中、NVIDIAが開発した「Tensorコア」は、AI/HPC(高性能計算)領域の演算処理を飛躍的に高速化するための革新的技術です。従来のGPUの汎用演算ユニットでは限界があった行列演算を、Tensorコアは混合精度を活用して効率的に処理することで、学習時間の短縮や推論処理の高速化、さらには電力効率の改善まで実現しています。

これにより、AIモデルの訓練や実稼働環境が今まで以上に現実的となり、AIインフラの設計や選定において新たな基準が生まれました。

本記事では、Tensorコアの定義・仕組みから進化の歴史、実際の高速化効果、そしてインフラ設計における活用ポイントまでを整理し、AI・ディープラーニングを支える次世代GPU技術の全体像をわかりやすく解説します。

Tensorコアとは?AI・ディープラーニングを加速するNVIDIAの革新技術

ここでは、次に挙げる3つの見出しを通じて、まず「Tensorコアとは何か」、その「CUDAコアとの違い」、そしてなぜ「AI分野で注目」される技術なのか、順を追って解説します。

 Tensorコアの基本的な仕組み

NVIDIAが開発したTensorコアは、AI・ディープラーニング処理における高密度の行列演算を高速に実行するために設計された専用演算ユニットです。

従来の汎用GPUでは苦手とされてきた多次元テンソル(行列)同士の掛け算や加算といった演算を、混合精度(例:入力FP16・出力FP32)で処理することで、演算のスループットを大幅に向上させています。

初代では「4×4行列の掛け算+加算」を1サイクルで処理する構成が採用され、これにより深層学習モデルの学習・推論処理におけるボトルネックを大きく緩和しました。精度を保ちつつ演算量を削減できるため、AIインフラの性能向上における基盤技術と位置づけられています。

CUDAコアとの違い

一方、NVIDIAのGPUに多数搭載されているCUDA(Compute Unified Device Architecture)コアは、グラフィックス描画、物理シミュレーション、一般機械学習など幅広い並列処理用途に使われる汎用演算ユニットです。

対照的にTensorコアは「行列演算(マトリックス・マルチプライ&アキュムレート)」に特化し、FP16/INT8などの低精度データ形式を活用しながら、大量の掛け算+加算処理を一括で実行できるように設計されています。

つまり、CUDAコアが幅広く使える汎用エンジンなら、TensorコアはAIモデルの演算処理に特化した高速化エンジンという棲み分けがされています。用途に応じて両者を使い分けることで、効率的な演算処理が実現可能です。

TensorコアがAI分野で注目される理由

近年、生成AIや大規模言語モデル(LLM)などの急速な普及により、モデルの学習・推論で求められる演算量・データ量・消費電力が急増しています。

こうした背景のもと、Tensorコアが持つ「混合精度を活用した高速行列演算」「演算あたりのエネルギー効率の改善」「大規模モデルでもスケール可能な演算スループット」という特性が強く求められています。

実際に、NVIDIAの公表ではTensorコア搭載GPUにより、トレーニング時間の大幅短縮や推論スループットの数倍~数十倍化が可能であるとされ、AI/HPC(高性能計算)用途のインフラ設計において欠かせない要素です。これらの理由から、TensorコアはAI分野で極めて高い注目を集めています。

Tensorコアの進化と世代別特徴

ここでは、Tensorコアの進化と世代別特徴を解説します。

VoltaからBlackwellまでの進化

Tensorコアは2017年のVoltaアーキテクチャで初登場し、AI計算を飛躍的に加速させました。

VoltaではFP16演算を中心に、行列演算をハードウェアレベルで最適化。TuringではINT8・INT4といった低精度形式が追加され、推論処理が効率化されました。AmpereではTF32を導入し、FP32精度を維持しながら約10倍のスループットを実現。

続くHopperではTransformer Engineが組み込まれ、FP8とFP16を動的に切り替えることで大規模LLMの学習を最適化しました。最新のBlackwellではFP4やFP6など超低精度演算にも対応し、AI推論性能をさらに高めています。こうした進化により、Tensorコアは「精度」「速度」「効率」をすべて向上させるAI計算の中心的存在となりました。
【Tensorコアの世代別進化比較表】

GPU世代発表年主な精度対応主な特徴
Volta(V100)2017FP16初代Tensorコア搭載、行列演算を最適化
Turing(T4)2018FP16/INT8/INT4低精度推論に対応
Ampere(A100)2020FP16/TF32TF32導入、精度維持と高速化を両立
Hopper(H100)2022FP8/FP16Transformer Engine搭載
Blackwell(B100)2024FP4/FP6第5世代Tensorコア、超低精度演算対応

各世代での演算精度と新機能

Tensorコアの進化は、対応データ型(精度モード)と新機能の追加によって明確に区別できます。Volta世代では主にFP16入力+FP32/FP16出力の混合精度演算が中心でした。

その後、Turing世代でINT8やINT4のような低精度演算も導入され、続くAmpereではTF32(Tensor Float 32)やFP64をサポートし、より広いAI/HPC用途に対応しています。さらに最新のBlackwellでは、FP4やFP6といった極めて低精度な演算形式が追加され、またINT8/INT4の拡張も進みました。

こうして、用途(学習・推論)やモデル規模に応じた最適な精度モードが選択できるようになり、GPU演算の柔軟性が飛躍的に高まりました。精度モードの拡張とともに、Warp/SM単位での演算数増加や新形式命令の採用などが、各世代で性能改善の鍵となっています。

スパース性と効率化技術

近年、AIモデルのサイズが飛躍的に拡大する中、「スパース( sparse )演算」が重要な役割を果たしています。

最新世代のTensorコアでは、行列のスパース構造を活かした演算最適化が組み込まれており、ゼロが多く含まれるモデル(例:大規模言語モデルの重み)を効率的に処理可能です。

スパース性の活用により、同じハードウェアでも理論上の演算能力を大きく上回る実効性能が得られ、消費電力当たりの推論処理量が改善されています。さらに、メモリ帯域制約の緩和やデータ転送の最適化とも連携して、AIワークロード全体としての効率化が実現されています。

TensorコアがもたらすAI・ディープラーニング高速化の実際

ここでは、「行列演算(GEMM)処理の最適化」「モデル学習(トレーニング)での効果」「推論(インファレンス)での性能最適化」という三つの観点から、実際にNVIDIA TensorコアがAI・ディープラーニング処理にどう貢献しているかを詳細に解説します。

行列演算(GEMM)処理の最適化

Tensorコアが真価を発揮するのは、AIの中心演算である行列積(GEMM)の高速化です。ニューラルネットワークの学習や推論では、重みと入力データの行列積が膨大に繰り返されます。

Tensorコアはこの計算を専用ハードウェアで最適化し、FP16やTF32などの混合精度を使うことで、精度を保ちながら演算を大幅に高速化します。特に、行列のサイズが8の倍数などハードウェア構造に最適化された形で配置されると、性能を最大限に引き出すことが可能です。

こうした構造的工夫により、Tensorコアは従来のFP32演算ユニットに比べて数倍のスループットを実現し、AIモデルの学習・推論における処理速度を劇的に改善しています。

モデル学習(トレーニング)での効果

AIモデルのトレーニングでは、膨大な行列演算を繰り返すため、計算効率がそのまま学習時間に直結します。Tensorコアを活用したGPUでは、混合精度演算を用いることで高速化と精度維持の両立が可能です。

これにより、学習の収束時間を大幅に短縮し、GPUリソースの効率的な利用が実現します。また、消費電力あたりの演算性能も高く、データセンター運用における電力コスト削減にも貢献しています。結果として、TensorコアはAI開発のコストパフォーマンスとスケーラビリティを支える要となっているのです。

推論(インファレンス)での性能最適化

モデルを実運用する段階では、応答速度と処理効率が重要です。TensorコアはFP16やINT8といった低精度演算を活用することで、推論処理を圧倒的に高速化します。

特に生成AIやリアルタイム推論では、数ミリ秒単位の遅延が品質に直結するため、Tensorコアによる高速演算は大きな価値を持ちます。また、NVIDIAの推論最適化ソフトウェア(例:TensorRT)との連携により、モデルをハードウェア構造に合わせて自動的に最適化できる点も強みです。

これにより、高いスループットと低消費電力を両立し、生成AIや会話AI、画像認識など多様な応用分野で安定した性能を発揮します。Tensorコアはまさに「学習から推論まで」を加速させる中核技術といえます。

Tensorコア対応GPUサーバーの設計ポイントと構成例

ここでは、Tensorコアの性能を最大限に発揮させるためのGPUサーバー設計について解説します。

GPU・サーバー選定のポイント

Tensorコアの性能を引き出すには、GPUの世代・Tensorコア数・メモリ帯域幅・通信帯域を総合的に判断することが欠かせません。最新世代では、演算精度の柔軟性とスループット性能が大きく向上しており、用途に応じて最適なGPUを選ぶことが重要です。

例えば、H100は第4世代Tensorコアを搭載し、FP8やTF32などの混合精度演算に対応しており、大規模AIモデルの学習に最適です。一方、L40Sは推論やマルチメディア処理向けに設計されており、消費電力を抑えつつ高い推論スループットを発揮します。

最新のBlackwell世代ではFP4/FP6など超低精度演算にも対応し、より省電力で高密度なAI処理を実現しています。

【代表的なTensorコア対応GPU比較表】

GPUモデル世代メモリ帯域主な精度対応主な用途
H100Hopper世代約3.35 TB/sFP8/FP16/TF32大規模AI学習/推論
L40SAda世代約0.9 TB/sFP16/TF32推論・メディア処理向け
Blackwell(B100)次世代約8 TB/s(想定)FP4/FP6/INT8超大規模AI/生成AI向け

このように、GPUは演算精度や帯域・用途によって特性が異なります。AIのトレーニングか推論か、または汎用HPC用途かによって、最適なGPU選定を行うことがサーバー設計の第一歩です。

ストレージ・ネットワーク・冷却設計の最適化

Tensorコアを備えたGPUを搭載しても、データ転送や冷却設計が不十分だと性能を活かしきれません。

特にAI学習では大量のデータを継続的に読み書きするため、NVMe SSDなどの高速ストレージと十分なI/O帯域が求められます。GPU間通信にはPCIe 5.0やNVLink、InfiniBandなどの高速ネットワークを採用することで、分散学習時のデータ転送ロスを抑えられるでしょう。

さらに、近年のハイエンドGPUは1基あたり最大700 Wを超える消費電力を持つため、効率的な電源供給と冷却システムの設計が不可欠です。

液冷式サーバーや高効率ヒートシンクの採用により、長時間のAIワークロードでも安定した動作が可能になります。ストレージ・通信・冷却のバランスを最適化することが、Tensorコアの真の性能を引き出すカギとなります。

まとめ

Tensorコアは、AIやディープラーニングの演算を劇的に高速化するNVIDIAの中核技術です。行列演算をハードウェアレベルで最適化し、混合精度演算によって高精度と高スループットを両立します。

VoltaからBlackwellまで進化を重ね、演算効率や省電力性も大幅に向上しました。しかし、Tensorコアの性能を最大限に引き出すには、GPUだけでなくストレージやネットワーク、冷却設計を含めたAIインフラ全体の最適化が不可欠です。

株式会社トゥモロー・ネットでは、高性能GPUサーバーや堅牢なストレージ、低遅延ネットワークを組み合わせ、用途に応じた最適なAI基盤構築を支援しています。

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この記事を書いた人

株式会社トゥモロー・ネット

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