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LLMとGPUの関係とは?LLMに必要なGPUのスペックも解説【トゥモロー・ネット テックブログ】

近年、大規模言語モデル(以下、LLM)とGPUの関係が注目されています。LLMは自然言語処理の高度なタスクを実現するために必要不可欠ですが、そのトレーニングや実行には膨大な計算資源が要求されます。計算資源を提供するのがGPUであり、LLMの性能や効率に直接影響を与えるため重要です。

本記事では、LLMの基本概念から始まり、具体的なモデルの紹介、GPUの基本的な仕組みや種類、そしてLLMとGPUの関係性について詳しく解説していきます。

LLM(大規模言語モデル)とは?

ここでは、LLMの基本概念、代表的なモデル、そしてそのトレーニングと推論プロセスについて解説します。

LLMの基本概念

LLMは、自然言語処理(NLP)の多様なタスクを効率的におこなうために設計された機械学習モデルです。大量のテキストデータを用いてトレーニングされ、人間のように文を生成したり理解したりする能力を持ちます。LLMは文の生成、翻訳、要約、質問応答など、さまざまなNLPタスクを実行可能です。

LLMの中心にはトランスフォーマーアーキテクチャがあります。トランスフォーマーは、自己注意機構(Self-Attention Mechanism)を利用して、文脈を理解し、関連する情報を効率的に処理します。

例えば、GPT-4は数千億のパラメータを持ち、前モデルに比べてさらに高精度な応答を生成することが可能です。このアーキテクチャの強力な計算能力により、LLMは複雑な言語タスクを迅速かつ正確に処理できます。

LLMを代表するモデル

現在、世界中の企業や研究機関がLLMの開発にしのぎを削っており、日々新しいモデルが登場しています。ここでは、特に注目すべき代表的なモデルをいくつかご紹介します。

GPTシリーズ (OpenAI)

「GPT-3.5」や「GPT-4」は、ChatGPTに搭載されていることで広く知られています。非常に高い対話能力と文章生成能力を持ち、LLMの普及を牽引する存在です。

Gemini (Google)

Googleが開発した高性能なマルチモーダルAIです。テキストだけでなく、画像や音声、動画といった複数の情報(モダリティ)を同時に理解し、処理できる能力が特徴です。「Gemini 2.5 Pro」や、より高速・軽量な「Gemini 2.5 Flash」など、用途に応じたモデルファミリーが提供されています。

LLaMAシリーズ (Meta)

Meta社が開発し、オープンソースとして公開されているモデル群です。研究者や開発者が自由にアクセスし、カスタマイズできることから、多くの派生モデルが生まれるエコシステムの基盤となっています。

DeepSeek

近年注目を集めている高性能なオープンソースLLMです。「DeepSeek-V2」などは、独自のアーキテクチャを採用することで、LLaMAシリーズを上回るコストパフォーマンスを実現したと報告されており、オープンソースコミュニティで大きな存在感を示しています。

BERT (Google)

文章の文脈を双方向から理解することに長けたモデルで、特にGoogle検索エンジンの性能向上に大きく貢献しました。

LLMのトレーニングと推論プロセス

LLMのトレーニングプロセスは複雑で、多くのステップを含みます。まず、大量のテキストデータを収集し、前処理してクリーンなデータセットを作成します。

次に、モデルを初期化し、トレーニングデータを入力します。トレーニング中は、損失関数を計算し、最適化することでモデルの精度を向上させます。トレーニングには大量の計算資源と時間が必要であり、高性能なGPUが不可欠です。

推論プロセスでは、トレーニングされたモデルに新しいデータを入力し、適切な出力を生成します。例えば、ユーザーが入力した質問に対して、モデルは関連性の高い応答を生成します。このプロセスもまた、計算資源を多く必要とし、GPUの性能が重要です。

GPUとは?

ここでは、GPU(Graphics Processing Unit)の基本的な仕組みから、種類と特徴、さらにCUDAコアとTensorコアの役割と違いについて詳しく解説します。

GPUの基本的な仕組み

GPU(Graphics Processing Unit)は、大量の並列計算を高速におこなうことができるプロセッサです。元々は画像処理を目的として開発されましたが、その高い計算能力と並列処理性能から、現在では機械学習や科学計算など、さまざまな分野で利用されています。

例えば、機械学習のトレーニングでは、膨大なデータセットを高速に処理するためにGPUが活躍します。GPUの構造は、多数の小さなコアで構成されており、これらのコアが同時に並列処理をおこなうのが特徴です。並列処理能力により、CPUに比べて大規模なデータセットや計算量の多い処理を効率的におこなえます。

GPUの種類と特徴

市場には多様な種類のGPUが存在し、それぞれが異なる用途や特徴を持っています。特に、大規模言語モデルやAI関連のタスクには、NVIDIAのデータセンター向けGPUやAMDのInstinctシリーズが注目されています。

NVIDIAのH100は、次世代のデータセンター向けGPUとして設計されており、深層学習や大規模言語モデルのトレーニングに最適です。高いメモリ帯域幅と計算能力を持ち、特に複雑なモデルの学習や推論において優れたパフォーマンスを発揮します。

また、AMDのInstinctシリーズは、AIやHPC(高性能計算)向けに設計されたGPUであり、大規模な科学計算やデータ解析に優れた性能を発揮します。Instinctシリーズは、コストパフォーマンスと計算効率に優れており、特にAI関連のタスクにおいて幅広いユーザーに利用されるのが特徴です。

CUDAコアとTensorコアの役割と違い

NVIDIAのGPUには、CUDAコアとTensorコアの主に二種類のコアが搭載されています。両者は異なる役割を持っており、それぞれが特定の計算タスクに最適化されているのが特徴です。

CUDAコアは、一般的な計算を担当します。シングルプレシジョンの浮動小数点演算に特化しており、幅広い計算タスクを効率的に処理可能です。画像処理や一般的な数値計算において高い性能を発揮します。

一方、Tensorコアは、行列演算を効率的におこなうために設計されています。特に深層学習タスクにおいて重要な役割を果たし、混合精度の行列乗算をおこなうことで、計算速度を大幅に向上させるのがメリットです。

GPUはその高い並列処理能力と多様なコア構成により、さまざまな計算タスクを効率的に処理することが可能です。特に機械学習やAIトレーニングにおいて、その重要性はますます高まっています。

LLMとGPUの関係

ここでは、LLMのトレーニングにおけるGPUの重要性、GPUがLLMのパフォーマンスに与える影響、そしてGPUのメモリ管理と効率化技術について詳しく解説します。

LLMトレーニングにおけるGPUの重要性

LLMのトレーニングには大量の計算資源が必要であり、そのなかでも特にGPUの並列処理能力が不可欠です。GPUは、並列計算に優れており、高速な計算能力を提供することでトレーニング時間を大幅に短縮します。

例えば、GPT-4のような大規模モデルのトレーニングには、数百から数千のGPUが必要となることもあります。GPUにより計算タスクを効率よく分担し、全体の処理速度を劇的に向上させることが可能です。

特に大規模なデータセットを使用する場合、高性能なGPUがトレーニングの効率に直接影響します。GPUの数や性能が高ければ高いほど、短期間でモデルをトレーニングでき、より頻繁にモデルの更新が可能になります。

GPUがLLMのパフォーマンスに与える影響

GPUの性能は、LLMのトレーニング速度だけでなく、推論の速度にも大きな影響を与えます。高性能なGPUを使用することで、より短時間でモデルをトレーニングできるだけでなく、リアルタイムでの応答速度も向上します。

また、GPUのメモリ容量も重要な要素です。メモリ容量が大きいほど、大規模なモデルやデータセットを扱うことが可能になります。

例えば、NVIDIAのH100 GPUは大きなメモリ容量を持ち、大規模なLLMのトレーニングに最適です。複雑なモデルも一度にメモリに読み込んで処理することができ、トレーニング効率がさらに向上します。

GPUのメモリ管理と効率化技術

GPUのメモリ管理と効率化技術は、LLMのトレーニングと推論において重要な役割を果たします。例えば、フラッシュアテンション技術は、メモリの使用量を削減しつつ、計算速度を向上できる仕組みです。これにより、より少ないリソースで高効率な処理が可能になります。

また、モデルファイルの分割は、必要な部分だけをメモリに読み込むことで、メモリ使用量を最小限に抑える手法です。さらに、メタデバイスの使用は、モデルを動的にCPUやGPU間で移動させることで、効率的にリソースを利用する技術です。これにより、トレーニングや推論の際に最適な計算リソースを動的に割り当てることができます。

このように、LLMのトレーニングと推論には、GPUの性能とその効率的な利用が不可欠です。高性能なGPUを活用することで、より高度な言語モデルの開発が可能となり、AI技術の進化に大きく貢献します。

LLMの学習(トレーニング)向けGPU

ゼロから巨大なLLMを構築したり、既存のモデルに大規模な追加学習を行ったりするには、最高の計算性能と大容量のメモリを備えたGPUが必要です。

NVIDIA H100 / H200 Tensor Core GPU

大規模言語モデルの学習における世界的な標準となっているGPUです。特に後継モデルのNVIDIA H200は、前モデルのH100に比べてメモリ容量(141GB)とメモリ帯域幅を大幅に強化しており、より巨大なモデルの学習時間を短縮し、開発を加速させます。

NVIDIA H200の製品詳細はこちら
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NVIDIA B200 Tensor Core GPU

NVIDIAの最新アーキテクチャ「Blackwell」を搭載した次世代のAIアクセラレータです。H200をさらに超える圧倒的な計算性能と効率性を誇り、数兆パラメータ級の超巨大モデルの学習を現実的なものにします。次世代AIの開発をリードする最先端のGPUです。

LLMの推論(インファレンス)とファインチューニング向けGPU

学習済みのモデルをサービスとして提供したり、特定のタスクに適応させるための追加学習(ファインチューニング)を行ったりする際には、性能とコスト効率、汎用性のバランスが取れたGPUが求められます。

NVIDIA L40S GPU

推論ワークロードに最適化されたGPUです。LLMの推論だけでなく、ファインチューニング、さらには高品質なグラフィックスやビデオ処理など、多様なAIワークロードに1台で対応できる高い汎用性が魅力です。24時間365日の連続稼働を前提とした設計により、優れたコストパフォーマンスと信頼性を実現し、AIサービスの基盤として理想的です。

NVIDIA L40Sの製品詳細はこちら
https://www.tomorrow-net.co.jp/product/nvidia-l40s/

その他GPU

モデルの規模や求められる応答速度に応じて、NVIDIA H100やNVIDIA A100といったGPUも、高いスループットが求められる大規模な推論タスクで利用されます。

まとめ

本記事では、LLMの基礎知識から最新のモデル動向、そしてその性能を最大限に引き出すためのNVIDIA GPU製品について解説しました。

GeminiやDeepSeekといった新しいモデルの登場は、LLMの可能性をさらに広げています。そして、この進化の核となっているのが、H200やB200に代表される学習用GPUと、L40Sのような推論・ファインチューニング用GPUの存在です。

ビジネスでLLMを活用するためには、「どのようなモデルを」「どのような目的で使うか」を明確にし、その上で「学習」と「推論」のどちらのフェーズに重点を置くかに応じて、最適なGPUインフラを選択することが成功の鍵となります。

株式会社トゥモロー・ネットは、NVIDIA社のパートナーとして、またSupermicro社の一次代理店として、お客様のAI開発・導入を強力にサポートいたします。今回ご紹介した最新のNVIDIA GPU製品の販売から、サーバーへの組み込み、データセンターの構築、そしてAI開発環境の導入支援まで、豊富な実績と専門知識に基づいた最適なソリューションをご提供します。LLM活用に関するご相談は、ぜひ当社までお寄せください。

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この記事を書いた人

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