【初心者向け】AI開発環境の構築ガイド|目的別の手順と推奨ハード・ソフトを紹介【トゥモロー・ネット テックブログ】

「AI開発を始めたいけれど、何から手をつければいいかわからない」
「自社に最適なAI開発環境は、クラウドと自社構築(オンプレミス)のどちらだろう?」
本記事では、そうした疑問を解消するため、AI環境構築の全手順を4つのステップに分けて、初心者にも分かりやすく解説します。
目的設定から、クラウド・オンプレミスの選択基準、具体的な構築手順、さらには企業や研究機関で使われるハイエンドな推奨ハードウェアまで、網羅的にご紹介していきます。
目次
ステップ1:目的を明確にする【なぜAI開発環境が必要か?】
AI開発環境の構築は、手段であって目的ではありません。最初に「AIを使って何を達成したいのか」を具体的に定義することが、最適な環境を選ぶための最も重要なステップです。
【目的の例】
- 画像認識
製品の不良品検知、医療画像の診断支援 - 自然言語処理
チャットボット開発、文章の自動要約、感情分析 - 予測分析
売上予測、株価の変動予測、顧客の離反予測 - 生成AI
文章や画像の自動生成、設計の自動化
目的が明確になることで、必要なデータの種類、計算リソースの規模、そして選ぶべきツールが決まってきます。
ステップ2:環境を選択する【クラウド vs 個別構築】
AI開発環境には、大きく分けて「クラウドサービスを利用する方法」と「自社でハードウェアを用意して個別構築する方法(オンプレミス)」の2つがあります。それぞれにメリット・デメリットがあり、目的や予算に応じて選択することが重要です。
比較項目 | クラウドサービス (AWS, GCP, Azureなど) | 個別構築 (オンプレミス) |
初期コスト | 低い(ハードウェア購入が不要) | 高い(サーバー・GPUの購入費) |
導入スピード | 速い(数クリックで環境を利用開始) | 時間がかかる(機材選定・設置) |
拡張性 | 非常に高い(必要に応じてリソースを増減) | 物理的な増設が必要 |
カスタマイズ性 | サービスの範囲内に限られる | 非常に高い(OSレベルから自由に構成) |
セキュリティ | サービス事業者に依存する部分がある | 自社のポリシーで厳格に管理可能 |
ランニングコスト | 利用量に応じて変動(高負荷が続くと高額に) | 電気代・メンテナンス費(資産として減価償却) |
選択基準の目安
- クラウドがおすすめなケース
「まずはスモールスタートしたい」
「急なリソース増減に対応したい」
「ハードウェアの管理をしたくない」 - 個別構築がおすすめなケース
「機密性の高いデータを取り扱う」
「特定のハードウェアで性能を最大限に引き出したい」
「長期的に見てコストを最適化したい」
ステップ3:具体的な構築手順

ここでは、個別構築(オンプレミス)を念頭に、AI開発環境をゼロから構築する手順を解説します。
1. ハードウェアの選定と準備
AI開発、特にディープラーニングでは、GPUの性能が学習速度を大きく左右します。目的に応じたスペックのサーバー、PC、そしてGPUを選びましょう。
PC/ワークステーションレベル
- CPU:Intel Core i7 / i9, AMD Ryzen 7 / 9
- メモリ(RAM):最低32GB、できれば64GB以上
- GPU:NVIDIA GeForce RTXシリーズ、NVIDIA RTX Ada世代シリーズ
- ストレージ:高速なNVMe SSD 1TB以上
ハイエンド(企業・研究向け)構成・製品推奨
大規模な言語モデルや複雑なシミュレーションを扱う場合、データセンター級のハイエンドな構成が求められます。
- サーバー:GDEPソリューションズやHPE、Dellなどが提供するGPU搭載サーバー
- CPU:Intel Xeon スケーラブル・プロセッサー, AMD EPYCシリーズ
- メモリ(RAM):256GB 〜 数TB
- GPU
NVIDIA H200:大規模言語モデル(LLM)の学習・推論に特化。超高速なHBM3eメモリが強み。
NVIDIA B200:現行最強のAI向けGPU。国家レベルの大規模AI基盤構築などに利用される。
NVIDIA RTX PRO 6000 (Blackwell):96GBの大容量メモリを搭載し、デスクトップでデータセンター級のAI開発やシミュレーションを可能にする次世代ワークステーションGPU。 - ストレージ: 数TB〜数十TBの高速なNVMe SSD(RAID構成推奨)
- ネットワーク: 高速なInfiniBandやEthernet
2. ソフトウェアのインストール
ハードウェアの準備が整ったら、AI開発に必要なソフトウェアを導入します。
- OSのインストール: UbuntuなどのLinuxディストリビューションが一般的です。
- NVIDIAドライバとCUDAの導入: GPUをシステムに認識させ、並列コンピューティングを可能にするために必須です。
- プログラミング言語の準備: Pythonがデファクトスタンダードです。Anacondaなどのディストリビューションを使うと、ライブラリ管理が容易になります。
- フレームワーク・ライブラリの導入
- TensorFlow / PyTorch: ディープラーニングの主要フレームワーク。
- Scikit-learn: 機械学習のための総合ライブラリ。
- Pandas / NumPy: データの前処理や操作に必須。
- 統合開発環境(IDE)のセットアップ: Visual Studio Code, Jupyter Lab/Notebookなどが人気です。
ステップ4:実践例【画像認識モデルの構築】
構築した環境を使って、簡単な画像認識モデルを開発する流れを見てみましょう。
- データ収集: 犬と猫の画像を数千枚集めます(Kaggleなどのデータセットを利用)。
- データ前処理: 画像サイズを統一し、ピクセル値を正規化します。
- モデル設計: TensorFlowやPyTorchを使い、畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を設計します。
- 学習: 準備したデータを使ってモデルを学習させます。GPU性能が高いほど、この時間が短縮されます。
- 評価・推論: 未知の犬または猫の画像を入力し、モデルが正しく分類できるか精度を評価します。
まとめ
この記事では、AI開発環境の構築方法についてご紹介しました。AI開発においてはデータの量と質が重要ですが、併せてデータを現実的な時間内で学習し、推論を行うことができるだけのスペックを持ったサーバーやPCも必要です。特にGPUはAIの品質を左右する重要な要素となりますので、高度なAIモデルの開発にあたってはハイスペックなGPUを確保できるかがポイントといえるでしょう。
トゥモロー・ネットでご支援できること
トゥモロー・ネットでは、NVIDIAのパートナー、Supermicroの一次代理店としてAI開発に最適なGPU製品の販売や導入サポートを実施しています。きめ細やかな提案、構築、導入を提供いたしますので、GPUをお探しの方はぜひお問合せください。
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この記事を書いた人

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