AI時代のサーバー冷却入門 – 4つの液冷方式の特徴と選び方 -【トゥモロー・ネット 技術ブログ】

目次
背景
近年、AIやHPC用途の拡大により、サーバー1台あたりの消費電力・発熱量は急激に増加しています。
特にGPUを多数搭載したサーバーでは、1ノードで数kW、ラック単位では数十kWに達する構成も珍しくありません。
こうした高発熱環境において、従来の空冷方式だけでは冷却能力や電力効率の面で限界が見え始めており、近年は液冷技術を中心とした新しい冷却方式が、データセンター設計やサーバー選定の重要な検討項目となっています。
本記事では、代表的な4つの冷却方式について、技術的な詳細に踏み込みすぎることなく、構造・特徴・向いている用途の観点から整理し、冷却方式選定の際の参考となる情報をまとめます。
液冷方式の実例についてはこちら
https://www.tomorrow-net.co.jp/topic/topic-blog-20250827/
DLC(Direct Liquid Cooling)の仕組みと特徴
DLC(Direct Liquid Cooling)は、その名の通り、CPUやGPUといった主要な発熱部品を直接液体で冷却する方式です。
空冷サーバーに搭載されているヒートシンクの代わりに、ウォーターブロックを装着し、そこに冷却水を循環させることで効率的に熱を回収します。
多くの構成では、CPU・GPUなどの主要部品のみを水冷し、それ以外の部品(メモリ、電源など)は空冷と液冷のハイブリッド構成が採用されます。

メリット
DLCの最大の特長は、発熱源をピンポイントで効率よく冷却できる点です。
- CPU・GPU直上で直接熱を回収可能
- 空調設備への負荷を大きく低減可能
- 高発熱GPUサーバーでも安定した冷却が可能
また、液冷方式の中では比較的実績が多く、主要サーバーベンダーからもDLC対応モデルが標準ラインナップとして提供されています。
注意点・導入時のポイント
一方で、DLCでは以下の点に注意が必要です。
- サーバー構成が専用仕様となる
- 配管の取り回しやリーク対策が重要
- メンテナンス時の脱着作業に配慮が必要
特に実運用では、配管の着脱手順や保守作業時の作業性が、運用負荷に直結します。
導入時には、冷却性能だけでなく、日常運用・保守のしやすさも重要な検討項目となります。
AALC(サイドカー方式)の仕組みと特徴
AALC*のサイドカー方式は、サーバー内部を水冷化し、その冷却水を隣接する「サイドカー装置」に送り、そこで空気と熱交換する方式です。
構成としては、以下のような流れになります。
(*AALC(Air-Assisted Liquid Cooling)は、データセンターや高性能サーバー向けに開発された、液体冷却と空冷を組み合わせたハイブリッド型の液冷システム)
- サーバー内部のCPU・GPUをウォーターブロックで直接水冷
- 発熱により温められた冷却水(温水)を、隣のサイドカー装置へ送水
- サイドカー内部のラジエーターとファンにより、サーバールームの冷気(空気)と熱交換
- 冷却された水を再びサーバー側へ戻す
つまり、サーバー内部はDLCと同様に水冷設計でありながらも、熱の最終放出先は施設水ではなく、サーバールームの空気を使用します。
施設側の水冷配管を必須とせず、空冷インフラを活かしながら、サーバー内部のみを液冷化する中間的な方式と位置づけることができます。

メリット
サイドカー方式の最大の特長は、液冷の高い冷却性能と、空冷インフラの導入容易性を両立している点です。
- CPU・GPUは水冷にすることで、空冷式より効率的に冷却
- ・熱の最終放出は空気側で行うため、施設側水冷工事が不要
- ・高発熱GPUサーバーにも対応しやすい
特に、DLCを使いたいが、施設側の水冷設備がない、大規模工事は避けたい、といった環境では、現実的な液冷導入手段として有力な選択肢となります。
注意点・導入時のポイント
一方で、サイドカー方式にも設計上の注意点があります。
- サイドカー装置の設置スペースが必要
- ラック幅・重量増加への配慮が必要
- 放熱先は空気のため、サーバールーム側の空調能力がボトルネックになる可能性
また、構造上は、サーバー内は水冷であるものの、最終的な放熱は空冷となることから、完全な液冷方式ほどの電力効率は得られない点にも留意が必要になります。
とは言え、DLCに近い冷却性能を、空冷インフラの範囲内で実現する方式として、現実的かつバランスの取れた選択肢と言えるでしょう。
液浸冷却(Immersion Cooling)の仕組みと特徴
液浸冷却は、サーバー全体を絶縁液に直接浸して冷却する方式です。
サーバー内部のファンを取り外し、発熱部品を含むすべての部品を液体中で冷却します。
冷却方式としては、下記の2種があり、いずれも高い冷却効率を持ちます。
- 単相式(液体は沸騰しない)
- 二相式(液体が沸騰・凝縮する)
メリット
液浸冷却の最大の特長は、冷却能力と実装密度の高さです。
- 空冷・他の液冷方式よりも高効率
- 非常に高密度な実装が可能
- ファンレス構成による低騒音・低消費電力
理論的には、最も理想的な冷却方式の一つと言えます。
注意点・導入時のポイント
一方で、実運用では課題も多く存在します。
- 専用筐体・専用運用が必須
- 既存サーバーの流用が難しい
- 部品交換・保守作業の手間が大きい
また、液体の管理、長期信頼性、保守体制など、運用面での成熟度は他方式に比べてまだ発展途上といえます。
トゥモロー・ネット、延岡市が実施する液浸サーバーの実証実験に参画
https://www.tomorrow-net.co.jp/news/topic-news-20250611/
リアドア熱交換器(Rear Door Heat Exchanger)の仕組みと特徴
リアドア熱交換器は、ラック背面に水冷式の熱交換器を取り付け、排気の熱をその場で回収する方式です。サーバー本体には手を加えず、ラック単位で冷却能力を強化します。
構造としては、既存環境との親和性が高い方式です。
- サーバーは従来どおり空冷
- 排気がリアドアで水冷回収される

メリット
リアドア方式の最大の強みは、導入のしやすさです。
- サーバー無改造(空冷)
- 既存ラックへの後付けが可能
- 工期が短く、段階導入がしやすい
既存データセンターの延命策・段階的な高発熱対応として、非常に実用的な方式です。
注意点・導入時のポイント
リアドア方式にも限界はあります。
- ラック単位での冷却能力に上限がある
- 超高発熱GPUサーバーでは単独では不足する場合がある
- 重量増加への配慮が必要
そのため、高発熱構成ではDLCなどとの併用が選択されるケースも増えています。
まとめ
本記事では、代表的な4つの冷却方式について整理してきました。
- DLC((Direct Liquid Cooling))
- AALC((サイドカー方式))
- 液浸冷却(Immersion Cooling)
- リアドア熱交換器(Rear Door Heat Exchanger)
いずれも「液体を用いた冷却」という共通点を持ちながら、導入条件・運用性・適した用途は大きく異なります。
冷却方式の選定においては、下記の様な複数の要素を踏まえ、長期運用に適した方式を選ぶことが重要になります。
- 想定するサーバー構成・消費電力
- 施設側の冷却インフラ条件
- 運用体制・保守性

今後、AI・HPC用途の拡大に伴い、ラックあたり消費電力のさらなる増加は、避けて通れない流れになると考えられます。
現時点では、まずサイドカー方式へ移行し、将来的にはDLCも選択肢に入るといった段階的な導入戦略が、多くの企業にとって現実的なアプローチになるでしょう。
冷却方式の選定は、単なる設備選びではなく、性能・コスト・運用・将来拡張性を左右する重要な設計判断です。
本記事が、冷却方式検討時の整理材料となれば幸いです。
トゥモロー・ネットでは、GPUサーバ構成や既存データセンター環境を踏まえた冷却方式の選定・段階導入に関するご相談も承っています。
液冷方式の検討にお悩みの際は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
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