• クラウドソリューション
  • テクノロジー

AI導入の課題トップは「セキュリティ」。43%が感じる不安を解消する方法【トゥモロー・ネット テックブログ】

AI技術の進化により、企業での導入が急速に進んでいます。しかしその一方で、「セキュリティやデータ管理などへの不安」を抱える企業も少なくありません。

特に、生成AIのように外部データを扱う技術では、情報漏えいや不正アクセスなどのリスクが顕在化しやすく、慎重な対応が求められます。一方で、AIを効果的に活用できれば業務効率化や競争力強化など多くのメリットも期待できるでしょう。

本記事では、AI導入が進む背景や日本企業の現状を整理しながら、導入時に直面する課題と、それを解消するための具体的な方法についてわかりやすく解説していきます。

※資料ダウンロードリンク
企業におけるDX化・AIリテラシーの現状に関する調査2025

AI導入が進む背景と日本企業の現状

ここでは、生成AI導入の世間の動き、次に日本企業の意識傾向を整理し、最後に顧客向けと社内利用における導入戦略の特徴を分析します。

生成AI普及と競争力強化で高まる導入ニーズ

ChatGPTなどの生成AIの登場は、企業における業務プロセスの変革を加速させています。特に自動化やデータ分析の分野では、生産性向上と新たな価値創出の両立が進み、AIは経営戦略上欠かせない存在となりつつあるでしょう。

IT専門メディアの調査では、AI市場は今後も拡大傾向にあり、企業が競争優位を確立するためには早期導入が重要とされています。すでに多くの企業が、顧客対応の効率化や開発支援、社内業務の自動化などで成果を上げており、AI導入の遅れは競争力の低下にも直結します。

ただし、成果を安定的に出すためには、データ管理や倫理面を含む運用体制の整備が不可欠です。AIはもはや単なるツールではなく、企業経営を支える「戦略的インフラ」としての位置づけが求められています。

7割が「期待」―国内企業がAIに注目する理由

Oktaの調査によると、日本企業の7割がAI導入に「懸念より期待」を抱いており、その割合は世界平均を大きく上回ります。

参考:日本企業の7割が「AIに期待大」、顧客向けサービスへの導入は慎重だが広範囲に連携─Okta調査 | IT Leaders

経営層の約3分の2がAIを「非常に重要」または「不可欠」と回答し、AIを経営戦略の中心に据える傾向が明確になっています。導入の主な目的は、業務効率化やタスク自動化による精度向上、そしてセキュリティ強化です。

特に人手不足が深刻化する日本では、AIを活用して生産性を高める動きが加速しています。AIは単なる省力化の手段ではなく、従業員の創造的業務を支援し、組織の意思決定を高度化する存在として期待されています。

今後は、AIを経営の一部としてどのように実装し、継続的な成果につなげるかが重要なテーマになるでしょう。

顧客向けサービスは慎重、社内活用は積極的な傾向

AI活用において日本企業が特徴的なのは、「外向けには慎重、内向けには積極的」という姿勢です。

Oktaの調査では、顧客向けサービスへのAI組み込みには慎重な企業が多い一方、導入する場合は「広範囲に統合する」と回答した割合が最も高いことが分かりました。これは、外部向け導入ではブランド信頼やセキュリティ面を重視し、リスクを慎重に管理する傾向を示しています。

その一方で、社内では生成AIを用いた文書作成や分析、報告業務の自動化などが急速に広がり、業務負担軽減と意思決定の迅速化に寄与しています。まずは社内業務で成果を積み上げ、その知見をもとに顧客対応へと展開していく段階的な導入が、日本企業の堅実な戦略として定着しつつあるのです。

AI導入で直面する主要課題

AIの導入は多くの企業にとって生産性向上や業務効率化の大きなチャンスである一方で、同時にさまざまな壁にも直面します。ここでは、AI活用を妨げる代表的な課題を五つの観点から整理していきます。

最重要課題はセキュリティとデータプライバシー

AI導入における最大の懸念は、機密情報や個人データの扱いに関するセキュリティリスクです。AIは大量のデータを学習に利用するため、外部からの不正アクセスや情報漏えい、モデル改ざんの危険が常に伴います。

また、生成AIなどでは、入力データが第三者に再利用される恐れや、誤った情報を出力してしまうリスクも指摘されています。さらに、利用者の知らないうちに著作物を参照したり、個人情報を含むデータを学習していた場合、法的な問題に発展する可能性もあるでしょう。

こうしたリスクを未然に防ぐには、導入前からデータの取り扱い方針を明確にし、アクセス管理や暗号化などのセキュリティ体制を整えることが欠かせません。AIを安全に活用するためには、「便利さ」よりも「安全性」を優先する姿勢が求められます。

高品質データ不足とガバナンス体制の未整備

AIの性能は、どれだけ良質なデータを与えられるかによって大きく左右されます。ところが実際には、データが分散していたり、正確性や一貫性が欠けていたりするケースが少なくありません。

また、部門ごとにデータを管理している企業では、組織横断的な活用が難しく、AIが正しい学習を行えないこともあります。さらに、データの利用目的や保管期間、削除ルールなどを明確に定めるガバナンス体制が整っていなければ、情報漏えいや倫理的な問題が起こる可能性もあります。

AIの導入を成功させるには、データの整備と管理体制の強化を同時に進めることが必要です。単に「量」を増やすのではなく、「信頼できるデータ」をいかに作り出すかが鍵となります。

人材不足・スキルギャップが進行を妨げる

AIを運用するには、データ分析やモデル構築、システム管理など、専門知識を持つ人材が欠かせません。しかし、多くの企業ではこうしたスキルを持つ人が限られており、AI導入のスピードを遅らせる要因となっています。

また、経営層と現場の間でAIへの理解度に差があると、導入の方向性が定まらず、結果として効果が出にくくなります。さらに、導入後もAIの運用や精度維持には継続的な知識更新が必要であり、社内人材だけでは対応しきれないケースも多いのが現実です。

そのため、外部の専門機関やパートナー企業と連携しながら、社内教育やリスキリングを進めていくことが不可欠です。AIを使える組織に育てるためには、人材投資を長期的に捉える視点が求められます。

ユースケースが不明確で投資対効果が見えにくい

AIを導入してもうまく成果につながらない原因のひとつが、「何のためにAIを使うのか」が曖昧なままプロジェクトを進めてしまうことです。

目的が不明確なままシステムを構築すると、導入後にどの指標で成果を測定するかが分からず、費用対効果が見えづらくなります。また、AIが得意とする業務を見極めないまま適用範囲を広げてしまうと、期待したほどの効果が得られないこともあります。

AI導入を成功させるには、まず「何を解決したいのか」を明確にし、KPIを設定したうえで段階的に進めることが重要です。小さな成功体験を積み重ねることで、社内の理解と信頼を得ながら本格導入へと発展させていけます。

既存システムとの統合や運用コストの負担

AIの導入は新しいシステムを入れるだけでは完結しません。既存の基幹システムや業務アプリケーションとの連携が必要となるため、技術的な調整や開発コストが大きくなります。

また、クラウド利用料やモデルの再学習・監視といった運用コストも想定以上に膨らむケースがあります。さらに、導入後はAIの精度を維持するためのメンテナンスやチューニングも継続的に必要となり、一度導入して終わりではありません。

これらを軽視すると、初期投資だけでなく長期的な運用費が経営を圧迫しかねません。そのため、導入前の段階でシステム連携やコストシミュレーションを慎重に行い、運用フェーズも含めた総合的な設計を行うことが重要です。AIを「導入すること」よりも、「持続的に使いこなすこと」が真の成功条件といえるでしょう。

AI導入課題を解消するアプローチと対策

AI導入を進めるうえでは、技術的・運用的な障壁を乗り越えるための設計が不可欠です。ここでは、セキュリティ対策、データ管理、法令遵守、人材支援、導入戦略という五つの軸から、実践的なアプローチをご紹介します。

IAM・ゼロトラストによる堅牢なセキュリティ対策

AI環境でのセキュリティ基盤には、アイデンティティ管理(IAM)とゼロトラストの原則を組み合わせて適用するのが有効です。

IAMシステムによって、誰がどのリソースにアクセスできるかを厳密に制御し、その要求ごとに検証を行います。ゼロトラストの考え方では、「ネットワークの内外を問わず、すべてを疑ってかかる」設計が求められ、アクセスを認める前にユーザー認証・デバイス認証・アクセス状況の評価を行います。

例えば、多要素認証(MFA)や最小権限アクセス、ログ記録とリアルタイムモニタリングを組み合わせて、不正な振る舞いを早期に検知できる体制を構築するのが大切です。このような重層防御を整備することで、モデルやデータ資産の悪用リスクを抑え、安全性の高いAI運用を実現できます。

データ品質向上とバイアス除去で信頼性を確保

AIモデルの信頼性は、入力されるデータの質に依存します。そこで、事前にデータクレンジングや欠損値処理、異常値の排除などの前処理を徹底し、ノイズを含まないデータを用意することが基本です。

また、モデルのバイアス(偏り)を軽減するには、公平性指標や分布チェックを活用して偏りを定期的に評価し、必要に応じてサンプル重み調整や特徴量選定の見直しを実施します。さらに、説明可能性(Explainability)を意識して、モデル出力の根拠を記録・可視化できるように設計しておくと、利用者や監査側からの信頼も得やすくなるでしょう。

こうした措置を通じて、AIの予測精度と社会的受容性を両立させることが可能になります。

コンプライアンス遵守と継続的な監査体制の構築

AI導入は法令遵守の観点で大きな責任を伴います。個人情報保護法や国際的な規制(GDPR など)に照らし、取り扱うデータの種類、保存期間、情報提供の透明性、利用目的の明確化を設計段階で確定する必要があります。

運用段階では、定期監査やリスク評価を実施し、脆弱性や逸脱項目がないかをチェックできる体制を維持することが重要です。例えば、アクセスログの保存・分析や、異常な操作の通知システム、内部監査制度との連携を整備することで、不正アクセスや誤用を未然に防げます。

これらを制度設計として初期段階から組み込むことで、AI運用時の法的リスクを抑制できます。

人材育成・リスキリングと外部パートナー活用

AIプロジェクトを成功させるには、社内に AI に関する知見を持つ人材を育てることが不可欠です。

まずは既存社員へのリスキリング(再教育)プログラムを導入し、基礎知識や運用スキルを共有できる体制を作ります。同時に、スキルが不足しているフェーズでは、信頼できる外部ベンダーや研究機関と連携してプロジェクトを推進する方法も有効です。

これにより、技術的な負荷を分散しながらノウハウを取り込むことができます。また、社内とパートナーの役割分担を明確にすることで、責任の所在・知識移転もスムーズになります。

組織として AI を使いこなす力を育てるためには、長期的な人材戦略と、段階的な体制強化が鍵です。

PoC活用から本格展開へ進める段階的な導入計画

AI導入で失敗しないためには、まず PoC(概念実証)段階で有効性を検証し、その結果を元に本格展開を進める方法が有効です。PoC によって、仮説の成立可否、運用負荷、システム連携の難易度などを把握できます。

例えば、PoC を成功させた後に段階的に導入範囲を拡大していくことで、リスクを抑えながら成果を積み重ねられます。

重要なのは、PoC を目的化せず、最終的に実運用につなげるロードマップをあらかじめ設計することです。こうしたステップを踏むことで、AI 導入を無理なく拡張し、投資対効果を確実に回収できる体制を構築できます。

まとめ

本記事では、AI導入をめぐる現状と、企業が直面しやすい課題、そしてそれらを克服するための具体的手法を整理しました。

AIは企業競争力を支える成長エンジンになり得ますが、セキュリティリスクやデータ体制、人材不足、投資効果の不確実性、運用コストといった壁を乗り越えなければ、導入は途中で頓挫しがちです。

これらを回避するには、IAM/ゼロトラスト設計、データの精緻化、法令順守体制の構築、育成と協業戦略、PoCからの段階展開が不可欠です。

トゥモロー・ネットでは、AI導入の初期設計からセキュリティ構築、運用支援までを包括的に支えるソリューションを提供しています。安心・安全にAIを使いこなしたい方は、ぜひお気軽にご相談ください。

AIアプリケーションサービス | 株式会社トゥモロー・ネット

お問合せ先

関連ページ

Kubernetesとは?コンテナオーケストレーションの仕組みとメリットを解説
失敗しないAI基盤構築|オンプレミス vs クラウド?最適なアーキテクチャ設計と実践ステップ
Dockerと仮想マシンの違いは?メリット・デメリットと使い分けを徹底比較

この記事を書いた人

株式会社トゥモロー・ネット

トゥモロー・ネットは「ITをもとに楽しい未来へつなごう」という経営理念のもと、感動や喜びのある、より良い社会へと導く企業を目指し、最先端のテクノロジーとサステナブルなインフラを提供しています。設立以来培ってきたハードウェア・ソフトウェア製造・販売、運用、保守などインフラに関わる豊富な実績と近年注力するAIサービスのコンサルティング、開発、運用、サポートにより、国内システムインテグレーション市場においてユニークなポジションを確立しています。
インフラからAIサービスまで包括的に提供することで、システム全体の柔軟性、ユーザビリティ、コストの最適化、パフォーマンス向上など、お客様の細かなニーズに沿った提案を行っています。

製品に関するお問い合わせはこちら