GPUメーカーランキング|データセンターインフラ市場について【トゥモロー・ネット テックブログ】

現代のデータセンターにおいて、GPU(Graphics Processing Unit)は、AIやビッグデータ解析、シミュレーションなどの高負荷な計算処理に不可欠な存在です。
従来、GPUは主に画像処理を目的として使用されてきましたが、高い並列処理能力が評価され、現在では多岐にわたる分野で活用されています。
特に、生成AIや大規模言語モデル(LLM)のトレーニングには、膨大なデータを高速で処理する能力が求められるため、GPUの導入が加速しています。
このような背景から、データセンターにおけるGPUの役割や、主要なGPUメーカーの市場動向、そして今後のGPU需要の予測について理解を深めることが重要です。本記事では、これらのテーマについて詳しく解説していきます。
GPUとは何か?現代データセンターにおける重要性
ここでは、GPUの概要とその需要が現代のデータセンターで急速に高まっている理由について詳しく解説します。
GPUの基本的な役割と進化
GPU(Graphics Processing Unit)は、もともと画像の描画や映像処理を担う目的で開発された専用のプロセッサです。現在のパソコンやスマートフォンにおいても、動画の再生やゲームグラフィックの表示などに欠かせない存在です。
しかし近年、GPUが画像処理にとどまらず、AIや科学技術分野での高度な演算処理に活用されるようになってきました。なぜなら、GPUは一度に大量のデータを同時に処理する「並列処理」に優れており、複雑な計算を短時間でこなす能力を持っているためです。
例えば、天気予測の数値シミュレーションや、自動運転車に搭載されるAIの意思決定演算など、処理するデータ量が膨大な場合に、GPUの力が大いに役立ちます。
このような背景から、GPUは単なるグラフィックス用のチップから、汎用計算用途にも適した「演算エンジン」へと進化を遂げてきたのです。
GPGPUとAI・生成AIの関係性
GPGPU(General Purpose computing on Graphics Processing Units)とは、GPUを画像処理以外の用途、特に数値計算やデータ分析、AI処理などに活用する技術のことです。
この技術の登場により、GPUの用途は一気に広がりました。特に生成AIのように、大量のテキストや画像データをもとに学習を行うアルゴリズムでは、一般的なCPUでは処理が追いつかないことがあります。
そこでGPGPUが活躍し、高速な演算によって学習期間を短縮し、より精度の高いモデルを生み出すことが可能になりました。
例えば、ChatGPTのような大規模言語モデルは、数兆単位のパラメータを持ちますが、それを学習するには数万枚のGPUが何日間も連続稼働する必要があります。こうした需要に対応できるのが、GPGPUの技術です。
その結果、GPGPUはAIの研究開発や実用化におけるキーテクノロジーとして位置づけられるようになりました。
なぜデータセンターでGPUが不可欠なのか
データセンターでは、企業や研究機関が行う大規模なデータ処理やAI演算のニーズに応えるため、かつてないほど計算能力が求められるようになっています。
従来型のCPUだけではその膨大な演算負荷に対応しきれず、結果として処理時間やエネルギー効率の面で限界が生じていました。
ここで注目されているのがGPUの導入です。GPUは、数千単位のコアを持ち、特定の計算処理を一斉に実行することで、AIモデルの学習や推論を短時間で完了させられます。
このように、AIや生成AIの発展に伴い、データセンターにおいてはGPUがもはや「補助的な装置」ではなく、「中核となる計算基盤」として不可欠な存在となっているのです。
【最新】GPUメーカー世界ランキング(2025年版)

2025年のデータセンター向けGPU市場は、AIと生成AIの急速な普及により、主要メーカー間で熾烈な競争が繰り広げられています。
ここでは、各社の最新動向と注目の新興勢力について詳しく解説します。
第1位:NVIDIA – 圧倒的シェアと技術力で市場を独占
NVIDIAは、データセンター向けGPU市場で90%以上のシェアを誇る圧倒的なリーダーです。最新の「H200」や「B200」などの高性能GPUを提供し、AIトレーニングや推論処理において他社を大きくリードしています。
特に、独自の開発環境であるCUDAは、開発者にとって使いやすく、エコシステム全体の強みです。さらに、NVIDIAは2025年にAIプロセッサ用のウェハー消費量が全体の77%に達すると予測されており、影響力が高いといえるでしょう。
第2位:AMD – MI300シリーズで巻き返し狙う
AMDはMI300シリーズを武器に、データセンター向けGPU市場での巻き返しを本格化させています。中でもMI300Xは、大容量のHBM3メモリ(最大1.5TB)を備え、生成AIのトレーニングにも耐えうる構成が特長です。
NVIDIA製品と比べてコスト効率が高く、Microsoft AzureやMetaといった巨大クラウド事業者による採用も進行中。加えてx86アーキテクチャとの親和性も高く、サーバー全体での統合ソリューションとしての価値も評価されています。
第3位:Intel – Habana/Gaudiシリーズで存在感を模索
IntelはこれまでCPU主体の展開でしたが、AI需要に対応すべく「Gaudi」シリーズでGPU市場に参入しました。
買収したHabana LabsをベースにしたGaudi 2・3では、推論処理に強みを持ち、NVIDIAよりも価格面で競争力を発揮しています。ただし、2025年の出荷目標を下方修正するなど、市場浸透には苦戦も。
とはいえ、インフラ提供側としての豊富な実績と資本力があるため、今後のAI戦略次第で浮上の可能性も十分に残されています。
第4位:Apple – 自社設計GPUで独自進化中
Appleはデータセンター市場に直接関与していませんが、M1・M2・M3チップに搭載された自社設計GPUによって、コンシューマーデバイス向けAI処理性能を大きく引き上げています。
これらのGPUは機械学習処理に特化しており、画像認識や音声解析など日常的なAI活用を効率良く支える設計になっています。現在はMacやiPadなどへの内蔵型GPUが中心ですが、Apple Siliconの進化が進めば、将来的なAIインフラ連携の可能性もゼロではありません。
第5位:Qualcomm – モバイル向けGPUで高シェア
QualcommのGPU「Adreno」は、スマートフォンを中心としたモバイル機器に広く搭載されており、特にSnapdragonシリーズでのAI性能向上に貢献しています。
エッジAI処理に特化しており、スマホ内での画像処理やリアルタイム音声翻訳などを高速に処理可能です。
データセンター用途では展開していないものの、IoTや車載領域、AR/VR分野などでの重要性が高まっており、今後はクラウドと連携するハイブリッドAI構成においても注目される存在でしょう。
データセンターインフラ市場のトレンドとGPU需要の未来
ここでは、生成AIの普及やハイパースケーラーの動向、GPU市場の競争状況、新たなサービスモデルの登場、そして将来の市場予測について詳しく解説します。
生成AIとハイパースケーラーが牽引するGPU需要
生成AIの急速な普及により、データセンターにおけるGPUの需要が飛躍的に増加しています。特に、OpenAIのChatGPTのような大規模言語モデルの運用には、高性能なGPUが不可欠です。
これに対応するため、Google、Amazon、Metaなどのハイパースケーラーは、GPUの大量導入を進めています。これらの企業は、AIモデルのトレーニングと推論の両方において、GPUリソースの拡充を図っており、データセンターの拡張計画を加速させています。
データセンター向けGPU市場はNVIDIA一強だが競争激化
2023年時点で、NVIDIAはデータセンター向けGPU市場で約98%のシェアを占めており、圧倒的な存在感を示しています。
同社の「H200」や「B200」などの高性能GPUは、多くのAIワークロードで採用されています。しかし、AMDやIntelも市場への参入を強化しており、競争が激化しています。
AMDのInstinct MI300シリーズやIntelのGaudiシリーズは、性能とコストのバランスを武器に、NVIDIAの牙城に挑戦しています。
GPU as a Service(GPUaaS)など新サービスモデルの登場
GPU as a Service(GPUaaS)は、クラウド経由でGPUリソースを利用できる柔軟なサービス形態として注目されています。企業や研究機関は、高価なハードウェアを購入せずとも、必要なときに高性能なGPUを利用できるため、初期投資の負担を軽減できる点が最大の魅力です。
Grand View Researchによると、世界のGPUaaS市場は2024年に約38億ドルと推定され、2025年から2030年までの年平均成長率(CAGR)は22.9%に達する見込みです。2025年の市場規模は43.7億ドル、2030年には122.6億ドルへと拡大が予測されています。
GPUaaSは今後、金融、ヘルスケア、製造業、メディア・エンタメ分野だけでなく、ゲームや教育、スマートシティ構想などにも浸透していくと見られており、クラウド時代の計算基盤としてますます重要性を増すでしょう。
2025年以降のGPU需要と市場予測(Synergy Research調査より)
Synergy Researchによると、2024年のデータセンター市場は2820億ドルに達し、今後も成長が続くと予測されています。
特に、生成AIの普及により、GPUの需要は右肩上がりで増加しています。2030年までには、ハイパースケールデータセンターの容量が現在の約3倍に拡大すると見込まれており、GPUの需要もそれに伴い増加することが予想されるでしょう。
まとめ
生成AIの進化に伴い、データセンターにおけるGPUの役割はますます重要性を増しています。とくにNVIDIAを筆頭に、各メーカーが高性能GPUを軸に市場拡大を進めており、ハイパースケーラーの積極的な設備投資もそれを後押ししています。
一方で、AMDやIntelの参入、新たなサービスモデルであるGPUaaSの普及も進み、選択肢はより多様化しています。
今後のインフラ計画を立てる際には、GPUの最新動向を的確に把握し、自社の成長に最適な選択肢を見極めていくことが重要です。GPU戦略の見直しや情報収集は、企業の発展にとって欠かせない要素となっていくため、積極的に進めていきましょう。
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