サーバー・サーバールームの熱対策の方法と対策が必要な理由【トゥモロー・ネット テックブログ】

サーバールームは、企業活動の中核を担う重要な施設です。多くのオフィスでは、セキュリティ対策に十分な配慮がなされている一方で、「熱対策」に関しては不十分なケースが見受けられます。
電子機器は熱に弱く、高温になると冷却ファンの回転数が増加し、騒音の原因となるだけでなく、故障のリスクも高まります。そのため、適切な熱対策を講じることが不可欠です。
本記事では、サーバールームの熱対策の重要性と、効果的な方法について詳しく解説します。適切な熱管理を行うことで、システムの安定稼働と機器の長寿命化を実現しましょう。
サーバー・サーバールームの熱対策が必要な理由とは?
サーバー・サーバールームで適切な熱対策が求められるのは、電子部品の劣化や故障を防ぐため、そしてシステムのパフォーマンスを維持するためです。以下では、それぞれの理由について詳しく解説します。
電子部品の劣化や故障の原因になるため
サーバーや関連機器は、稼働中に発生する熱が適切に放散されないと、高温にさらされる状態が続きます。熱の蓄積は、内部の電子部品に大きな負担をかけます。その結果、部品の劣化が早まり、故障のリスクが増加するでしょう。例えば、電解コンデンサは高温環境下で使用されると寿命が短くなる傾向があります。
さらに、部品の劣化によって発生する故障は、保守費用の増加につながります。特に、交換が難しい部品や特殊な設備が必要な場合には、修理コストが跳ね上がることもあるでしょう。また、最悪の場合、システム全体の停止を招く恐れもあり、企業活動への影響が甚大となる可能性があります。重要なデータの損失や業務の中断を防ぐためにも、熱対策は欠かせない要素です。
パフォーマンス低下につながるため
過度な熱は、サーバーの性能に直接影響を与える場合があるでしょう。現代のサーバーには、一定の温度を超えた場合に機器を保護するための回路が備わっています。保護回路が作動すると、CPUのクロック数を自動的に下げる仕組みが働きます。クロック数が低下すると、システム全体の処理速度が遅くなり、パフォーマンスが著しく低下することがあるのです。
このような状況では、システムの応答性が悪化し、ユーザーの業務効率にも影響を及ぼします。また、負荷の高いアプリケーションを動かしている場合には、パフォーマンス低下が顕著に表れるため、熱対策を怠ることは大きなリスクとなるでしょう。
適切な熱対策を講じることで、機器の故障リスクを軽減し、安定したパフォーマンスを維持することが可能です。これにより、長期的なコスト削減や業務効率の向上が期待できます。
サーバー・サーバールームの熱対策の方法とは?
サーバー・サーバールームでの熱対策は、システムの安定性や耐久性を維持するために欠かせません。以下では、代表的な熱対策方法について詳しく解説します。
空調設備による冷却
空調設備を活用した冷却は、最も一般的で効果的な熱対策の一つです。専用の空調システムを導入することで、サーバールーム全体の温度を一定に保つことができます。通常、サーバールームの推奨温度は18~27℃に設定されており、この範囲内を維持することで機器の過熱や性能低下を防げます。
また、空調設備の効率を上げるためには、エアフローの管理が重要です。冷気をサーバーに的確に供給し、発生した熱を速やかに排出する設計が求められます。特に、ラックの前面から冷気を取り込み、背面から熱を排出する「ホットアイル」と「コールドアイル」の分離を実施することで、空調効果を最大化できます。
コールドプレート型冷却
コールドプレート型冷却は、サーバーの直接冷却を目的とした技術です。この方法では、冷却液を循環させる冷却プレートをサーバー内部やプロセッサ周辺に設置し、熱を直接吸収・除去します。これにより、空気を介した冷却よりも効率的に熱を取り除くことが可能です。
高密度な機器が集まるデータセンターで利用されることが多く、冷却効率が高い反面、初期導入のコストや設置スペースの確保が課題となります。導入を検討する際には、運用コストと効果のバランスを見極めることが重要です。
液浸冷却
液浸冷却は、サーバー全体を冷却液に浸すことで効率的に熱を除去する手法です。冷却液は電気を通さない特殊な液体が使用され、直接的な冷却効果が得られるため、非常に高い冷却性能を発揮します。
従来の空冷方式やコールドプレート型冷却では対応が難しい、高発熱のハイパフォーマンスサーバーで利用されています。ただし、液浸冷却には導入コストが高いというデメリットがあり、機器の運用やメンテナンスにも専門知識が必要となるため、慎重な検討が求められるでしょう。
リアドア
リアドア冷却は、サーバーラックの背面に冷却装置を取り付ける方法です。この装置は、ラック内部の排熱を吸収して冷却液で効率的に除去する仕組みになっています。リアドア冷却の利点は、空調設備への依存を軽減し、ラックごとに局所的な冷却が可能になる点です。
また、エネルギー効率が高く、空調コストの削減にもつながります。特に、既存の空調設備の能力が限られている場合や、ラック密度が高い環境で有効です。導入にあたっては、既存のラックシステムとの互換性や冷却装置のメンテナンス要件を事前に確認する必要があります。
これらの方法を適切に選択・組み合わせることで、サーバールームの温度管理を効率的に行い、安定した運用環境を確保することが可能です。
サーバールームの温湿度管理のポイント

サーバールームの温湿度管理は、機器の安全性とパフォーマンスを維持するために重要です。不適切な温湿度環境は、機器の故障やシステム停止の原因となる可能性があるため、適切な設定を行うことが求められます。以下では、温度と湿度の管理について詳しく解説します。
適切な温度設定
サーバールームの理想的な温度は18~27℃とされています。この範囲を維持することで、機器の過熱や故障を防げます。高温は電子部品の劣化を加速させ、故障リスクを高める一方、過度に低温での運用も結露の原因となるため注意が必要です。
また、温度管理を効率化するためには、ラック内のエアフローを最適化することが推奨されます。具体的には、コールドアイルとホットアイルを分離し、冷気と熱気の混合を防ぐ設計が効果的です。これにより、空調システムの負荷を軽減し、安定した温度管理が実現します。
適切な湿度設定
湿度管理も、温度管理と同様に重要なポイントです。理想的な湿度は40~55%とされており、この範囲内を維持することで、結露や静電気の発生を防げます。湿度が低すぎる場合、静電気の発生が増加し、電子機器にダメージを与える可能性があるでしょう。一方で、湿度が高すぎると結露が発生し、基板やコネクタ部分がショートするリスクが高まります。
湿度管理には、加湿器や除湿機を適切に活用し、環境を安定させることが重要です。また、温度変化が急激に起こらないようにすることで、湿度の変動も抑えることが可能です。
これらの管理ポイントを徹底することで、サーバールーム内の機器を長期間にわたって安全に運用できます。
サーバー・サーバールームの効果的な熱対策のポイント
サーバー・サーバールームの熱対策は、システムの安定性と寿命を保つ上で欠かせません。以下では、具体的な対策方法を解説します。
サーバー周辺の熱を逃がす
サーバールーム内で発生した熱を効率的に排出するためには、サーキュレーターや換気装置の活用が効果的です。サーキュレーターは空気を循環させ、室内の熱が偏らないようにします。一方、換気装置を設置することで、熱が外部にスムーズに排出され、冷却効率が向上します。
特に、ラック内に蓄積しやすい熱を逃がすためには、ラック専用の換気ユニットやリアドア冷却を組み合わせるとさらに効果が高まるでしょう。また、部屋全体の空気の流れを調整することで、サーバー周辺に熱がこもることを防げます。
空気循環の最適化をする
空気循環を効率的に行うためには、コールドアイルとホットアイルを分離する設計が重要です。コールドアイルとは冷気が流れる通路を指し、ホットアイルは熱気が排出される通路を指します。2つを適切に分離することで、冷気と熱気が混ざるのを防ぎ、冷却性能を最大化できます。
また、ラックの前面から冷気を吸気し、背面から熱気を排出する流れを確立することで、冷却効率がさらに向上するでしょう。この方法は空調システムの負荷を減らし、エネルギー消費の削減にもつながります。
定期的な清掃とメンテナンスを実施する
サーバールーム内のほこりや汚れは、冷却効率を低下させる大きな原因となります。冷却ファンや空調設備のフィルターに汚れが詰まると、空気の流れが悪化し、結果的に冷却性能が落ちます。そのため、定期的な清掃は不可欠です。
さらに、冷却システムの点検を行い、フィルターの交換や冷媒の補充を適切に実施することで、システムのパフォーマンスを維持できます。また、ラック内のケーブル配線を整理することで、空気の流れを妨げる要因を取り除くことが可能です。
これらのポイントを組み合わせることで、サーバールーム全体の熱対策を効果的に行うことができ、機器の長寿命化や安定運用につなげられます。
まとめ
サーバー・サーバールームの熱対策は、システムの安定性と機器の寿命に直結する重要な要素です。適切な対策として、熱の排出、空気循環の最適化、定期的な清掃とメンテナンスを実施することが挙げられます。
これらの対策を継続的に行うことで、システム全体のパフォーマンスを維持し、トラブルを未然に防ぐことができます。効率的な熱管理は、長期的なコスト削減や業務の安定性向上にもつながるでしょう。
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