OSNEXUS社QuantaStorスケールアップ構成(OpenZFSベース)【トゥモロー・ネット テックブログ】
2023年12月13日公開のテックブログでご紹介しましたOSNEXUS社のQuantaStor製品に関するブログ第二弾となります。前回、QuantaStorの特長の1つとして、スケールアップ (OpenZFSベース) とスケールアウト (Cephベース) の両方を構成できるプラットフォームとして紹介しました。そこで、今回のブログではスケールアップ構成を支える技術について、ご紹介します。
目次
QuantaStorでのスケールアップ (OpenZFSベース) 構成の利点
Quantastorとは、ソフトウェアデファインドストレージ (Software Defined Storage, SDS) に分類されるソフトウェア製品です。具体的には、業界標準のx86サーバーと内蔵もしくは外部接続されたJBOD/JBOF (Just a Bunch Of Disks/Flash, ただのディスク/フラッシュの束) と呼ばれるディスク装置で構成されたサーバー上に、そのディスクに対するボリューム管理機能を行うソフトウェアを稼働させることで、さまざまなストレージサービスを提供します。
ここで、スケールアップ構成の利点について、あらためて、整理したいと思います。
スケールアップ構成では、2台のサーバーとそれらに共有接続されたJBOD/JBOF筐体の台数を増やすことで提供可能なストレージ容量を増やすことのできる構成です。また、ストレージ構成管理は、OpenZFSストレージテクノロジーと統合して、ファイル (NFS/SMB) 、ブロック (iSCSI, FC, NVNeoF) のプロコルを提供します。さらに、高可用性を担保するためのストレージプールの自動フェイルオーバー機能が実装されています。サーバーはアクティブ・スタンバイ構成となります。
スケールアップ構成の利点は、構成がシンプルであることが挙げられます。ストレージサービスを提供するサーバーがアクティブ・スタンバイ構成であることから、サービス提供する処理能力は1台のサーバーに搭載されたCPUやメモリ、ネットワーク帯域で決まることになります。また、ストレージ容量に関しては、ストレージ拡張筐体を増やすことで必要な容量を確保するという構成となります。
次に、QuantaStorのスケールアップ構成における (サービス提供の) サーバーの可用性機能について、紹介します。
スケールアップ構成を支えるHAクラスタ技術について
OpenZFSベースのスケールアップ構成において、アクティブサーバー (ノード) とスタンバイサーバー (ノード) 間で共有されるストレージ装置内のデータに関する整合性を担保することは重要な機能となります。
ZFS自体には、ストレージ装置に対するディスクボリューム管理やファイルシステム管理の機能は持っていますが、HA構成のためのサーバー間でのアクセス切り替えの機能は持っていません。
QuantaStorでは、クラスタ構成サーバーの死活監視や共有ストレージへのサーバーからのアクセス制御を独自実装することで、ZFSベースのスケールアップ構成に対するHAクラスタ機能を提供しています。
ここからは、QuantaStorのHAクラスタ構成の要件とフェイルオーバー発生時の動きについて説明したいと思います。
まず、HAクラスタ構成するには、以下の要件を満たす必要があります。
(HA Cluster Setup (JBODs) – OSNEXUS Online Documentation Site)
- QuantaStorサーバーが2台
- 2台のサーバー間でのハートビート通信のために、ネットワークが2ポート
- 2台のサーバー間で共有できるストレージ装置とその装置へのマルチパス接続可能である機器
SAS JBOD/JBOF, NVMe JBOF, FC-SAN, iSCSI-SAN (いずれもSCSI3 Persistent Reservationsをサポートされていること、または、NVMeではreserve/preemptをサポート)
なお、QuantaStorがサポートするデュアルコントローラ付きディスク拡張筐体は、各社 (Supermicro, Seagate, Western Digital, Dell EMC, HPE, Lenovo) から提供されています。実際の構成には、後述する構成ツール (ZFS Designer — OSNexus)で確認することが可能です。
次に、フェイルオーバー発生時のサーバー間での動きに関する機能実装を説明します。
ハートビート構成(サーバー (ノード) の死活監視)
HAクラスタ構成では、各サーバーあたり最少2つの固定IPアドレスがハートビートを流すために必要です。また、固定IPアドレスは異なるネットワークセグメントに配置する必要があります。そうすることで冗長パスでのハートビート通信を保証します。なお、ハートビートを流すネットワークには、他の管理トラフィックやクライアント通信などとは分離されることが推奨されます。そのことにより、他の通信によるハートビートの遅延や欠損による誤検知でのフェイルオーバー (サーバーの切り替え) イベントを回避することが期待されます。
(ハートビート用の構成例)
QuantaStor Server 1 – eth0=10.0.13.101 / 255.255.0.0 eth1=192.168.113.101 / 255.255.0.0
QuantaStor Server 2 – eth0=10.0.13.102 / 255.255.0.0 eth1=192.168.113.102 / 255.255.0.0
ストレージプールHAグループ作成 (通常のストレージプールにフェイルオーバーポリシー設定)
ディスクがクラスタの両方のサーバー (ノード) から認識できることが確認できたら、ストレージプール(ZFS) を作成します。作成されたストレージプールに対して、HAグループを作成することで、当該ストレージプールのプライマリサーバーとセカンダリーサーバーを指定することが可能となります。
HA Virtual Interface (VIF) 仮想IPアドレスの付与
HA VIFは、ストレージプールに割り当てられ、サーバー間でプールと共に移動するIPアドレスです。
ストレージグループが現在インポートされているサーバーに関係なく、(iSCSI、NFS、SMBの) クライアントからのストレージプールへの一貫した接続を提供します。
HA Group Activation
VIFの付与まで完了すれば、HAグループのアクティブ化する準備が整ったことになります。HAグループをアクティブ化すると、クラスタはサーバーメンバーの死活監視を開始します。
アクティブ化されたサーバーがオフライン状態として検出された場合、または使用可能な2つのハートビート接続のいずれかを介しても応答しなかった場合、ストレージプール (共有ボリューム) と仮想 IP アドレス(VIF)のフェイルオーバーを開始します。
手動操作によるフェイルオーバー機能
ストレージプール HA グループがプライマリサーバーとセカンダリーサーバー間で正常にフェイルオーバーできることをテストする機能が用意されています。また、何らかの理由 (計画メンテナンスやプライマリサーバーのユーザビリティを中断する可能性のあるその他のタスクなど) で必要な場合に、ストレージプールをセカンダリーサーバーに移動するために使用できます。
フェイルオーバー発生時には、以下のような処理が実施されます。
・ネットワーク共有サービスとそれに関連するストレージボリュームの提供が停止されます。
・サービスアクセス用の仮想IPアドレスが停止されます。
・アクティブサーバー (プライマリサーバー) でのSCSI3 PGR (アクセスリザベーション) がクリアされ、ストレージプールがスタンバイサーバー (セカンダリーサーバー) に移されます。
・スタンバイサーバーで、ストレージプールがインポートされ、SCSI3 PRG (アクセスリザベーション) がセットされます。
・サービスアクセス用の仮想IPアドレスがスタンバイサーバーで起動されます。
・ネットワーク共有サービスとそれに関連するストレージボリュームの提供がスタンバイサーバーで開始されます。
以上が、QuantaStorのスケールアップ構成 (HAクラスタ構成) 時の主な可用性機能の実装となります。OpenZFSベースに開発されたストレージ機器管理機能に、独自開発された可用性機能を付加することで、企業向けのストレージソリューションとして強化されています。
QuantaStorソリューションの適用領域
SDS (Software Defined Storage) 製品であるQuantaStorは、多種多様なサーバーとストレージ機器筐体(JBOD/JBOF) との構成に関する自由度が高く、1つのプラットフォームでさまざまな領域に適用が可能です。そのため、業種・業界には関係なく、利用用途に応じて導入頂けるソリューションです。
仮想化やデータベース利用、長期アーカイブ、メディア編集、医療系の画像保存、IoTから大量データを貯めるようなデータレイク、または、学術・研究分野での安定したデータの保存先としても利用可能です。
なお、IO処理性能(IOPS)が期待される業務用途に利用される場合は、スケールアップ構成 (OpenZFSベース/HAクラスタ構成) の方がスケールアウト構成より、適合する構成になると考えます。
また、比較的、初期投資を抑えつつ、導入しやすいのもスケールアップ構成になります。ただし、ストレージ容量が8PBを越えることが予想される場合は、スケールアウト構成 (Cephベース) をご検討いただくことをお勧めします。
デザインツール (コンフィギュレーションツール)
QuantaStorの構成を作成するには、2つのWebベースのツール(スケールアップ (ZFSベース) 用、スケールアウト(Cephベース)用) が用意されています。
(ソリューション設計ツール http://www.osnexus.com/design)
構成作成の主な流れは以下のようになります。
Step1)ソリューション設計ツール http://www.osnexus.com/design ポータルへ
Step2) スケールアップ構成 (https://www.osnexus.com/zfs-designer)かスケールアウト構成(https://www.osnexus.com/ceph-designer) かを選択して、ツールを起動
Step3) 必要なストレージ容量を指定(Usable)
Step4) ユースケースを選択 (ユースケースに応じて、推奨されるディスク構成などが事前定義されます)
Step5) サーバーモデルやディスク拡張ユニットのモデルを選択 (選択したメーカーに合わせて調整要)
ストレージ構成は、データの保護レベル (RAIDやイレジャーコーディング) は適宜、選択調整
Step6) 必要なライセンスとして、サポート期間 (1年、3年、5年) とサポートレベル (Gold, Silver,
Platinum) を選択
まとめ
今回は、OSNEXUS社のQuantaStor製品に関して、主にスケールアップ (OpenZFSベース) を構成する上で特長ある可用性機能について、ご紹介させて頂きました。いかがだったでしょうか。
増え続けるデータを利活用するためのNASストレージは、市場からますます必要とされてきています。
さまざまなワークロード特性に対して、拡張性と可用性をリーズナブルなTCOで対応可能な製品かと思います。
次回は、QuantaStorのもう一つの構成方式であるスケールアウト構成 (Cephベース) について、ご紹介したいと思います。
トゥモロー・ネットでは、SDSストレージの製品選定や構成検討から導入支援サービス、保守サポートまでご相談頂ける体制をご用意しています。是非お気軽にお問合せください。
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この記事の筆者
株式会社トゥモロー・ネット
クラウドソリューション本部
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