RoCEとは?InfiniBandとの違いから分かる、GPUネットワークの最適解【トゥモロー・ネット テックブログ】

目次
はじめに
生成AIや大規模言語モデル(LLM)の活用が広がるにつれ、GPUの性能だけでなく、「GPU同士をどうつなぐか」というネットワーク設計の重要性が急速に高まってきました。
「GPUを増設したのに、学習や推論の処理時間が思ったほど短縮されない」
「スケールアウトした途端に、性能の伸びが頭打ちになる」
こうしたケースでは、GPUそのものではなくGPU間の通信がボトルネックになっていることも少なくありません。
高速ネットワークの代表格としては InfiniBand が広く知られてはいますが、「専用ネットワークでコストが高そう」「運用のハードルが高いのでは」と感じる企業も多いのが実情です。
そこで注目されているのが RoCE(RDMA over Converged Ethernet) です。
本記事では、RoCEの基本から特長、InfiniBandとの違い、そしてGPU環境での役割などを分かりやすく解説します。
RoCEとは何か?
RoCEとは、Ethernet(イーサネット)上でRDMA(Remote Direct Memory Access)を実現する技術です。
通常のネットワーク通信では、データ転送のたびにCPUやOSが介在し、メモリコピーや割り込み処理が発生します。これが積み重なると、通信遅延やCPU負荷が増大します。
RoCEでは、RDMAの仕組みにより、CPUをほとんど介さずにメモリ間で直接データ転送が行えます。
その結果、通信のレイテンシを抑えつつ、CPUリソースをアプリケーション処理に集中させることが可能になります。
もともとRDMAはInfiniBandで使われてきた技術ですが、その高速通信の仕組みをEthernetでも利用できるようにしたのがRoCEです。
現在は、IPネットワークに対応した RoCE v2 が主流となっており、既存のデータセンター環境にも組み込みやすくなっています。
RoCEの特長と利点
RoCEの最大の特長は、既存のEthernetネットワークを活かしながら高速通信を実現できる点です。
従来のEthernetは汎用性に優れる一方、AI用途ではレイテンシやCPU負荷が課題になることがありました。
RoCEはRDMAを組み合わせることで、その弱点を補います。
- CPU負荷を抑えた低遅延・高帯域通信
- Ethernetベースのため機器選択の自由度が高い
- 既存データセンターとの親和性が高い
- 段階的な導入や拡張がしやすい
「専用ネットワークを一から構築するのは難しいが、AI向けに通信性能は引き上げたい」
RoCEは、こうした現実的な要件に応えられる技術と言えます。
InfiniBandとの違い
RoCEとInfiniBandは、どちらも高速なGPU間通信を実現する技術ですが、設計思想には明確な違いがあります。
| 項目 | InfiniBand | RoCE |
| 基盤 | 専用ネットワーク | Ethernet |
| レイテンシ | 非常に低い(安定) | 低い(設計に依存) |
| コスト | 高め(専用機器が必要) | 抑えやすい(既存機器を活用可能) |
| 構築難易度 | 低(自動設定・管理が成熟) | 高(複雑なネットワーク設定が必要) |
| 向いている用途 | 大規模AI学習、HPC | AI推論、現実的なAI基盤 |
| スケール特性 | 大規模でも性能を維持しやすい | 規模拡大時は設計が重要 |
InfiniBandは、非常に低いレイテンシと高い安定性を備えており、大規模GPUクラスタでも安定した性能を発揮します。
一方、RoCEはネットワーク設計(PFCやQoSなど)が性能に影響するものの、コストや運用面での柔軟性に優れています。
「最高性能を追求するか」or「現実的なバランスを取るか」が、選択の分かれ目と言えます。
GPU環境におけるRoCEの役割
GPUを複数台利用するAI環境では、GPU間通信の効率が学習時間や推論性能に大きく影響します。
特に分散学習では、勾配情報の同期など、GPU間で大量のデータ通信が発生します。
RoCEはGPUDirect RDMAと組み合わせることで、GPUメモリ間のデータ転送を効率化し、CPUやメインメモリを経由しない通信を実現します。
これにより、通信によるオーバーヘッドを抑えつつ、GPU本来の性能を引き出すことが可能になります。
ただし、PFCやQoSの設計が不十分な場合、ネットワーク輻輳によって性能が安定しないケースもあります。
RoCEは「導入すれば自動的に速くなる」技術ではない点は注意が必要です。
どんな環境にRoCEが向いているか
RoCEが向いている環境を整理すると次のようになります。
- Ethernetベースのデータセンターを活用したい
- 中〜大規模のAI基盤やGPU推論環境
- コストと性能のバランスを重視したい
- 将来的な拡張を見据えたい
「InfiniBandほどの性能は必須ではないが、通常のEthernetでは物足りない」
そんなケースでRoCEは有力な選択肢になります。
まとめ
InfiniBandとRoCEに「どちらが正解」という答えはありません。
重要なのは、目的・規模・運用体制に合ったネットワークを選ぶことです。
- 大規模AI学習や最高性能を求めるなら InfiniBand
- 既存環境を活かし、現実的に高速化するならRoCE
GPU時代のネットワーク設計では、こうした使い分けが、AI基盤全体の価値を大きく左右します。
トゥモロー・ネットでは、InfiniBandおよびRoCEの両方に対応したGPUサーバー構成やネットワーク設計のご提案が可能です。
AI開発・推論基盤の用途や規模、ご予算に応じて、最適なネットワークを含めたインフラ設計をご支援します。
「どちらを選ぶべきか分からない」「まずは相談してみたい」といった段階でも構いませんので、お気軽にお問い合わせください。
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