AI導入成功のカギは「インフラ×サービスの一体戦略」|最新調査とマルチAIエージェントの可能性【セミナーレポート】

企業のAI活用はこの一年で確実に進みました。しかし現場で耳にするのは、「方針も予算もあるのに、思ったように進まない」「PoCから先に踏み出せない」という課題です。
その多くはAIサービスの活用にあたっての様々な悩みだけではなく、GPUやストレージ、ネットワーク、そしてコンテナ基盤に至るまでのAIインフラ土台が整っていないことにも起因しています。
2025年8月27日に開催された株式会社トゥモロー・ネット主催のセミナーでは、この土台をどう設計し、どう運用すれば成果に結びつくのかを最新調査と具体的なデモを交えて紹介しました。本記事では、当日の内容を振り返ります。
セミナー開催概要
本セミナーは以下の二部構成で実施されました。
- 第一部:「企業のAI活用の現状と課題・マルチAIエージェント」登壇: 取締役兼CPO 澁谷 毅
- 第二部:「AI活用を成功に導くインフラ戦略」登壇:AIプラットフォーム事業本部 ソリューション部門 平田 敦
参加者はDX推進や情報システムを担う企業の責任者・企画担当者が中心で、現場で直面するリアルな課題に寄り添った議論が展開されました。
第一部:AI活用の現状と課題
冒頭、澁谷は1,033名を対象に実施した自社調査「企業におけるDX化・AIリテラシーの現状に関する調査2025」の主だった結果を紹介しました。
- DXに取り組んでいる企業:91%
- AI関連で予算を確保している企業:96%
推進意欲は非常に高い一方で、
- 社内に専任AI人材がいる:32%
- ベンダートレーニングが十分:24%
と、運用体制は十分に整っていない実態が明らかになりました。

さらに「期待したアウトプットが得られない」「トラブル時に対応できない」「社内で相談できる人がいない」など、運用面の課題も多数指摘されています。
澁谷はこれらを運用・体制、サポート、セキュリティ、AIそのものの品質、社内理解という5つの軸に整理し、「このギャップを埋めることが、AIをビジネス成果へつなげる鍵」と強調しました。
課題を解決するアプローチとして紹介されたのが自社開発AIプラットフォーム CAT.AI の中核を担う マルチAIエージェント です。
マルチAIエージェントは、従来のシングルタスクをこなすAIエージェントとは異なり、
- オペレーショナルAI(判断・実行)
- ジェネレーティブAI(LLM連携による生成)
- ナビゲーショナルAI(ルールベース制御)
の3種類のAIをリードエージェントが統合的に制御。単一タスクに特化した従来型では難しかった複雑な業務フローの自動化を実現します。
人事採用を想定したデモでは
- 応募書類の自動選考
- 面接候補日の提示
- 採用コストの算出
- 適性検査のレーダーチャート化
- 面接質問の自動生成
といった一連の複数タスクをシームレスに処理する様子を紹介しました。

また、粗大ごみ品名特定や製品問い合わせ対応を自動化する画像認識・音声ボットの事例も紹介され、マルチモーダル対応やプロンプト自動生成、オープンデータの細粒度制御など高度な特徴も説明しました。
最後に澁谷は、今後は自律型AIエージェントやパーソナライズAIエージェントが主流となり、データの量・質に加えユーザーの行動パターンモデルがAI価値の源泉になると指摘。
情報の機密性が一層高まる中で、オンプレミスやコロケーション環境の需要が増える未来を展望し、第二部にバトンをつなぎました。
第二部:AI活用を成功に導くインフラ戦略
第二部では、アンケート調査から、AIサービス導入が進むために必要な要素として約3割の企業が「ITインフラの整備」を課題に挙げている現状が紹介されました。社内のAI人材育成や外部専門家による継続的なサポートに次いで高い割合を占めており、適切な製品選定や導入体制の未整備、ノウハウ不足が浮き彫りになっています。

そのうえで平田は、AI活用を成功に導くために企業がどのようなインフラ戦略を打ち出していくべきかを解説しました。
AIの学習や推論は、GPUリソース、低遅延のネットワーク、高速なストレージを前提として初めて性能を発揮します。性能が不足すれば学習は伸びず、推論は遅くなり、体験価値も毀損されます。さらに、PoCから本番、そして全社展開に移行するには、初期段階から拡張性を織り込んだスケールアウト設計が欠かせません。
運用面では、KubernetesやDockerを活用した環境再現性、迅速なデプロイ、自動復旧、リソースの可視化が、安定稼働とコスト管理の土台になります。セキュリティとデータガバナンスも同じレイヤーで設計しなければ、品質とスピードは両立できません。
それに加えて業務効率を高めるために「AIエージェントも使いたい」となると、複数部署を巻き込む必要があり、一企業として進めるには非常にハードルが高いのが実情です。
そんな企業のためにお勧めなのがトゥモロー・ネット独自のマルチAIエージェント搭載アプライアンス「Qeek AI Orchestrator」です。

「Qeek AI Orchestrator」は、CAT.AIマルチAIエージェントを搭載したオールインワン基盤で、短期立ち上げと将来拡張性を両立させる製品です。
スターターモデルはクラウドLLMと連携して検証をすぐに始められ、小規模導入やPoCに最適です。スタンダードモデルはクラウドを介さずオンプレミスでLLMを安全に運用でき、機密情報を扱う業務に適します。スケールモデルは専用GPUサーバーを追加して同時多エージェントや大規模展開に対応し、全社導入や将来のスケールアウトも視野に入れられます。
実際の利用シナリオとして、管理部門に集中する社内問い合わせの自動化、閉域環境での安全なAI活用が求められる金融領域、部門ごとに分散した知識やFAQを統合して全社で再利用するナレッジ基盤の構築が示されました。キーワードは「簡単・スケーラブル・セキュア」。まさにPoC止まりを回避し、本番定着を加速するための実践解といえます。
まとめ
今回のセミナーを通じて明らかになったのは、AIの成功はアプリケーション単体ではなく、基盤と一体で考えることが欠かせないという点でした。
GPU、ストレージ、ネットワーク、コンテナ基盤のいずれかが欠ければ、精度や速度、運用のいずれもボトルネックとなり、期待した成果は得られません。
一方、トゥモロー・ネットが提案するマルチAIエージェント搭載アプライアンスQEEK AI Orchestratorを活用すれば、複雑な立ち上げを最小限に抑えつつ、スモールスタートから全社展開へと確実に歩を進められます。
自社のユースケースやデータの機密度を見極め、クラウド/オンプレ/コロケーションの最適解を早期に選び、エージェント設計や品質・運用体制まで含めて伴走できるパートナーと議論することが、成功への近道です。
AIを本番環境で価値創出につなげたいとお考えの企業は、ぜひトゥモロー・ネットまでご相談ください。最新の知見と豊富な実装経験をもつ同社が、最初の一歩から全社展開まで、確実に伴走します。
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この記事を書いた人

株式会社トゥモロー・ネット
トゥモロー・ネットは「ITをもとに楽しい未来へつなごう」という経営理念のもと、感動や喜びのある、より良い社会へと導く企業を目指し、最先端のテクノロジーとサステナブルなインフラを提供しています。設立以来培ってきたハードウェア・ソフトウェア製造・販売、運用、保守などインフラに関わる豊富な実績と近年注力するAIサービスのコンサルティング、開発、運用、サポートにより、国内システムインテグレーション市場においてユニークなポジションを確立しています。
インフラからAIサービスまで包括的に提供することで、システム全体の柔軟性、ユーザビリティ、コストの最適化、パフォーマンス向上など、お客様の細かなニーズに沿った提案を行っています。