• クラウドソリューション
  • テクノロジー

失敗しないAI基盤構築|オンプレミス vs クラウド?最適なアーキテクチャ設計と実践ステップ【トゥモロー・ネット テックブログ】

AI技術の進化とともに、企業の競争力を左右する要素として「AI基盤」の重要性が増しています。特に、生成AIやディープラーニングの普及により、大量データの処理や高性能なリソースの確保が求められるようになりました。

これらのニーズに応えるためには、オンプレミスとクラウドの特性を理解し、最適なアーキテクチャを設計することが不可欠です。本記事では、AI基盤構築の重要性、クラウドとオンプレミスの選定ポイント、そして実践的なアーキテクチャ設計のステップについて解説します。

AI基盤構築がビジネス成功の鍵を握る理由

AIは、もはや研究開発や概念実証にとどまる技術ではありません。現在では、業務現場で実際に価値を生み出す「実用技術」として広く定着しつつあります。

ここでは、AI基盤構築がビジネス成功の鍵を握る理由について解説します。

AI活用の広がりと実用フェーズの到来

これまでAIの導入は、PoC(概念実証)にとどまるケースが一般的でしたが、現在では意思決定支援や業務自動化といった実運用フェーズへと移行しています。

背景には、生成AIやディープラーニングといった技術の進展があります。これらの技術により、大量かつ複雑なデータをリアルタイムで処理する能力が求められており、従来のITインフラでは対応が難しくなってきているのです。

ただし、クラウドサービスやAI専用チップの進化によって、こうした要件を満たすAI基盤の構築も、現在では現実的な選択肢となっています。まさに今が、AI活用を本格化させる絶好のタイミングといえるでしょう。

インフラ整備が甘いとAIが期待通りに動かない

AIプロジェクトが失敗に至る要因として、見落とされがちなのが「インフラ設計の甘さ」です。処理能力が不十分な場合、AIモデルの学習や推論に想定以上の時間がかかり、結果として実務に活かせなくなります。

また、初期段階でスモールスタートに重きを置きすぎると、後からの拡張が困難になり、追加投資や再設計が必要になるケースも少なくありません。さらに、PoC段階でセキュリティ対策を後回しにした場合、本番運用時に監査要件を満たせず、重大なビジネスリスクにつながる恐れもあります。

こうしたインフラ面での設計の隙は、プロジェクト初期の段階で解消しておくことが重要です。

基盤構築の最適化とROI最大化のため

AI基盤を明確な方針もなく整備してしまうと、期待した成果を得ることは難しくなります。まずは、AI導入によって何を解決したいのか、どのような成果を目指すのかといった目的や目標を明確にしなければなりません。

これにより、必要な処理能力やデータ構造、運用の流れといった要件が具体化されていきます。さらに、KPIやユースケースを具体的に設定することで、設計範囲が明瞭になり、不要な機能追加や過剰なスペック投資を回避可能です。

そして、ROI(投資対効果)を数値として可視化することで、経営層からの理解と承認を得やすくなり、意思決定のスピードも向上します。限られたリソースの中で最大の成果を得るためには、目的と手段を整合させることが不可欠です。

クラウド vs オンプレミス|AI基盤の選定ポイント

AI基盤の構築において、「クラウド」か「オンプレミス」かの選択は、プロジェクト全体の成否を左右する重要な判断材料となります。ここでは、それぞれのメリット・リスク、さらに両者を併用したハイブリッド構成について解説します。

クラウド活用のメリットとリスク

クラウドは、初期投資を抑えつつスモールスタートが可能な点が大きな特長です。必要なときに必要な分だけリソースを利用できるため、PoCや短期のプロジェクトに適しています。

また、最新のGPUやTPUといったAI向けの高性能なハードウェア、各種フレームワークに迅速にアクセスできる点も大きな魅力です。さらに、メンテナンスはクラウドベンダーが担うため、自社の運用負荷を軽減できるという利点もあります。

一方で、長期間または大規模に運用する場合には、利用量に応じた従量課金によってコストが膨らむ可能性が高いです。加えて、セキュリティやコンプライアンス面の要件に対応しづらい業種では、導入そのものが難しくなるケースも見受けられます。

ベンダーロックインの懸念や、データの所在が不透明になるリスク、通信遅延などの問題も含め、用途や規模に応じた事前検討が不可欠です。

オンプレミスが有効なケースとは?

オンプレミスは、自社内に物理的なITインフラを構築・運用する方式で、高度なセキュリティ要件を満たす必要がある業界に適しています。

例えば、金融、医療、製造業などでは、顧客情報や機密データの取り扱いが厳しく管理されており、クラウドではなくオンプレミスが選ばれる傾向にあります。社内ネットワーク内でシステムを完結させる必要がある場合も、オンプレミスの方が適しているでしょう。

また、定常的に大規模な処理を行う環境では、オンプレミスが長期的に見てコスト効率に優れる場合があります。特にAIモデルの学習やバッチ処理を日常的に行うケースでは、クラウドの従量課金モデルではコストが想定以上に膨らむことも多いです。

初期投資が発生する分、1年以上の継続利用を前提とすることでコストパフォーマンスが高まるという判断が可能です。

ハイブリッド構成という選択肢

オンプレミスとクラウド、それぞれの利点を組み合わせた「ハイブリッド構成」は、近年多くの企業が採用を検討する構成です。

具体的には、機密性の高いデータはオンプレミスで厳密に管理し、リソースを大量に消費するAIの学習処理などはクラウドで柔軟に対応するといった分担が考えられます。

このような構成をとることで、セキュリティとスケーラビリティを両立させることが可能です。近年では、コンテナ技術やKubernetesなどのオーケストレーションツールにより、環境間の連携や移行も現実的な選択肢となっています。

ただし、導入にあたってはネットワーク設計や運用フローの複雑化を考慮し、十分な技術的体制と運用計画を整備する必要があります。

最適なアーキテクチャ設計のステップ

AI基盤の構築を成功に導くには、行き当たりばったりの導入ではなく、ビジネス視点に立脚した設計ステップが不可欠です。ここでは、ステップごとに詳しく解説します。

ステップ① ビジネス要件・AI活用目標の定義

最初のステップは、AI活用の目的を明確にすることです。例えば「業務プロセスの自動化」「売上予測の精度向上」「製品品質のリアルタイム監視」など、どの業務課題をAIで解決したいのかを言語化する必要があります。

また、関係部門とのヒアリングを通じて現状の課題を可視化することで、AI活用の方向性とゴールが具体的になります。この段階で曖昧なまま構築を進めると、後工程で要件のブレが発生し、無駄な設計・開発コストを生みかねません。

ステップ② ツール・リソース・ネットワークの選定

次に行うべきは、技術スタックの選定です。AI処理に必要な計算リソース(CPU、GPU、TPU)の選定は、ユースケースごとの負荷に応じて行う必要があります。

並列処理が多いモデル学習であればGPU、高速推論処理を求めるならTPUといったように、求められる性能に応じた選択が肝心です。また、ストレージはアクセス速度や冗長性、容量拡張性なども踏まえて構成を検討する必要があります。

加えて、学習データの転送や外部連携が発生する場合は、ネットワークの帯域やセキュリティも考慮した設計が求められます。

ステップ③ セキュリティ・コンプライアンス対策の組み込み

AIシステムは機微な個人情報やセンシティブな業務データを扱うことが多いため、初期段階からセキュリティとコンプライアンスの要件を設計に織り込むことが重要です。

例えば、GDPRや個人情報保護法、ISMSといった各種法規制に準拠する必要がある場合、それに応じた設計方針を明確にしておく必要があります。具体的には、ユーザーやシステム間のアクセス権限管理、通信データの暗号化、操作ログの記録と保全などが挙げられます。

PoC段階では軽視されがちですが、本番運用後に不備が発覚した場合の修正コストは高くつくため、事前の対策が欠かせません。

ステップ④ 運用とスケーラビリティを見据えた設計

AIは一度構築して終わりではなく、継続的な改善と運用が求められる仕組みです。そのため、運用フェーズを見越したアーキテクチャ設計が必要です。

例えば、MLOpsの導入によって、モデルの継続的学習や定期的な再トレーニング、バージョン管理の自動化などを仕組み化することで、運用負荷の軽減と品質の安定を両立できます。

また、障害発生時のリカバリ手順や、アップデートフローをあらかじめ整備しておくことで、システムダウンの影響を最小限に抑えることが可能です。将来的なリソース追加や構成変更にも対応できるよう、柔軟性を確保した構成を心がけることが望ましいです。

まとめ

AI活用を成功に導くには、優れたアルゴリズムやツールだけでなく、それを支える堅牢で拡張性のあるインフラ基盤の整備が欠かせません。

AIモデルの学習・推論には大量のデータ処理が必要となるため、高性能なサーバーやGPU、安定したストレージ、低遅延のネットワーク環境が前提となります。要件定義から構成設計、運用フェーズまで一貫して見据えたアーキテクチャが、投資対効果の最大化を実現するために欠かせません。

株式会社トゥモロー・ネットでは、AIワークロードに最適化されたインフラソリューションを提供しています。高性能なGPUサーバー、高速・大容量のストレージシステム、信頼性の高いネットワーク設計まで、あらゆる構成要素を組み合わせ、AIの処理性能を最大限に引き出す環境を構築します。

これにより、お客様のAIプロジェクトをより早く、より確実にビジネス成果へとつなげることが可能です。導入をご検討中の方は、いつでもお問い合わせください。
インフラストラクチャーサービス | 株式会社トゥモロー・ネット

お問合せ先

オンプレやクラウドについてのご相談・お問い合わせはこちら

関連ページ

AI活用に不可欠なインフラストラクチャーNVIDIA AI Enterpriseについて
AIデータセンターを構築するメリット・デメリット
エッジコンピューティングとは?概念から仕組みまでを解説

この記事を書いた人

株式会社トゥモロー・ネット

トゥモロー・ネットは「ITをもとに楽しい未来へつなごう」という経営理念のもと、感動や喜びのある、より良い社会へと導く企業を目指し、最先端のテクノロジーとサステナブルなインフラを提供しています。設立以来培ってきたハードウェア・ソフトウェア製造・販売、運用、保守などインフラに関わる豊富な実績と近年注力するAIサービスのコンサルティング、開発、運用、サポートにより、国内システムインテグレーション市場においてユニークなポジションを確立しています。
インフラからAIサービスまで包括的に提供することで、システム全体の柔軟性、ユーザビリティ、コストの最適化、パフォーマンス向上など、お客様の細かなニーズに沿った提案を行っています。

製品に関するお問い合わせはこちら