2017.09.29

電子カルテによる医療データの2次利用

こんにちは。 Kiyotoshiです。

夏季休暇を使って、家族旅行をしたのですが、途中であの「ミッドウェイ海戦」があった、ミッドウェイ島の上を通過しました。
機長がアナウンスで、「右側にミッドウェイ島が見えます」と言うので、飛行機の窓から覗いて見てみた写真です。

青い海に白い雲が点在し、小さく島が見えています。
濃紺の空と水平線の白、海の青が、地球と宇宙の境目を思わせる写真となりました。
今回の話は、ミッドウェイ島とは関係ありませんが・・・。

さて、今回は、電子カルテのEMR(Electric Medical Record)から少し俯瞰(鳥の目?)して見たEHR(Electronic Health Record)と個人健康情報のPHR(Personal Health Record)についてです。

◇EHRとPHR

EMR(電子カルテ)は、患者の病気を主体に診療内容を記録した、病院で管理している医療情報データです。
これに対し、EHR(電子健康記録又は生涯医療記録)は、患者の生活に沿った健康状態の情報データです。
また、PHR(個人健康記録)は、個人自身で自己管理している情報です。
近年は、IoT(Internet of Things)としてインターネットと物をつなげて利用するような仕組みを指しています。
PHRはこのIoTを利用して血圧や心拍数、トレーニング、食事情報からの栄養価等、個人管理できる健康情報となります。

EHRとPHRは、既に1900年台くらいからヨーロッパ等で研究が進んでいます。
ロンドン大学の研究チームGEHR(Good European Health Record)プロジェクトで1991年より研究が始まり、その後ロンドン大学、オーストラリアやスウェーデンで研究され、2009年にISOTC251委員会でISO13606規格として認められました。
(参考:欧州における医療データの2次利用openEHRの進展と組織体制)

ヨーロッパでは、極端とも思えますが、人が生まれてから死ぬまでの情報を管理して、患者としての診療情報だけではなく、健康情報のすべてを広域で共有し2次利用(分析)し、医療の発展・向上に努めるような事が検討されてきています。

◇日本の医療システム

現在の日本の医療は、電子カルテを中心として、各医療機関で整備されてきています。
医療情報データの2次利用も進み始めていているのですが、EHRとしての2次利用は、医療情報データ自体がまだまだ2次利用するためのデータ収集や標準化等の整備をする事が困難な環境であると言う状況があるが故に、まだまだ遠いと思われます。
ただ、地域医療連携という形で各自治体や厚労省がSS-MIX2(SS-MIX2:Standardized Structured Medical Information eXchange 厚労省が進めている医療情報の標準化)を利用したデータの2次利用を進めています。
これは連携レベルという形で標準化を進めていますが、データモデリングとしては標準化にはなっていないと思います。
現在の日本における医療システム環境は、オーダーリング(医師から各部門への指示システム)は50%弱の普及となっていますが、EHR等で本来共有すべき情報としてのEMR(電子カルテシステム)は全体の40%にも満たない状況となっています。
特に200床未満の病院、診療所、クリニックの普及はかなり低く、30%前後となっており、電子カルテ化は、日本の医療業界全体での課題となっています。

またEHRは、電子カルテだけではなく、医療を取り巻く調剤薬局や健診センター等、個人を中心に健康を管理する仕組みとして進歩しなければならないと思います。
400床以上の病院であれば、8割程度が電子カルテを導入し、医療情報としての管理やデータの蓄積が進み始めていますが、中小の医療機関や診療所での電子カルテ導入が進んでいないので、EHRとしての健康管理情報の管理やそのデータの利活用ができていないところです。

◇医療情報の個人管理

もともとPHRの個人管理の健康情報について、誰しも自分の健康管理は行っていると思いますが、その結果や状態を保存している事はあまりしていないと思います。
IoTを使ったシステムでの個人健康情報や医療機関で受診した情報を個人管理することでPHRは成り立つと思いますが、まだIoTを使ったデータ管理は始まったばかりですし、電子カルテのデータ管理、開示等もこれから一般化されてくる事が望まれます。

カルテは誰の物かという議論がある通り、現在の日本の医療では、個人の医療情報は、病院にあり、患者個人で管理することはしていません。
最近は、お薬手帳が政府レベルで、保険診療点数として算定が可能とってきた程度です。

10年程前、滞在中の中国で病気にかかり、近くの診療所で診てもったのですが治らず、大きい病院で治療を受けた事があります。
診療終了時、どちらの病院も紙カルテを個人に手渡されました。

次の病院に行ったとき、そのカルテを見せれば、個人の診断・診療がわかります。
アナログでしたが、個人管理するカルテでした。
地域医療連携という事より、個人管理するカルテが本来必要であり、医療情報の管理、分析は個人管理の上に成り立つものと思っていました。
ちなみに紙カルテの様式は診療所も病院もほぼ同じ様式を使っていて「標準化?」されていました。
中国も広いので、自治区ごとの管理なのかもわかりませんが、その時は同じ診療録だなと感じました。

PHRで個人情報の管理を行い、個人ヘルスケアを基盤として、EHRが管理されることで、個々人の健康状況を管理し、適切な医療を個人管理に基づき、医療機関等で治療を行う事が可能になる事が理想ですね。

とは言え、前述の通り、日本に於いて(世界も同じかもしれませんが)は、病院の電子カルテ化、医療情報の標準化がまだ進んでいないというのが実情です。

これからの日本のヘルスケアについて、各メーカーが多種多様な形で提案・提供するだろうと思います。

また、私立大学、国立大学等の併設医療機関などで医療情報の蓄積や2次的利用、個人ヘルスケア情報等の取り扱いを含む医療情報研究が進む事と思います。

私も国の施策、自治体、各研究機関と連携し、個人管理する医療情報やヘルスケア情報の仕組みやその実現と成果評価を行い、社会に貢献できるようになりたいと思っています。

ページトップへ戻るボタン